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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二十二話 秋田小町その九

「洒落にならない人でも」
「お母さんに暴力は振るわなかったわ」
「そう言ってたんだね」
「そうだったの、そうしたことは一度もなくて」
 それで、というのだ。
「下品なこともしなくて」
「ああ、確かに下品じゃないね」
「そうでしょ、実際に」
「うん、別にね」
 遊人でもそうした人間じゃない、このことも間違いない。
「ないよ」
「それじゃあね」
「最低な人間じゃないか」
「やっぱり最低な人って」
 ここでだ、詩織さんが眉を曇らせて言うその最低な人とは」
「近所にいたけれど」
「どんな人だったのかな」
「働かないで飲む打つ買うで奥さんや子供さんに暴力を振るって」
 話を聞いていて如何にもと思った。
「それで借金までしてね」
「本当に最低だったんだね」
「それでお酒で身体壊して肝硬変で亡くなったわ」
「何か自業自得だね」
「うん、私もそう思うわ」
「そうした人ってね」
 所謂最低な、もう何もかもがそうである人はだ。
「あまり長生きしないね」
「そうした生活してるから」
 飲む、それも果てしなくだ。しかも女遊びまで始終していて尚且つ暴力ばかり振るう様な荒んだ精神状況だとだ。
 ストレスも溜まる、それではだ。
「長生き出来ないわ」
「だよね」
「そうした生活はしないこと」
 詩織さんは真摯な顔で言った。
「やっぱりね」
「それが大事だよね」
「ええ、本当にね」
「最低な人間も何パターンかあるけれど」
 例えば震災の時の総理大臣だ、あの人は本当に見ていて最低だと思った。気付けば汚物を見る目で見ていた。
「そうした最低な人はね」
「長生きしないわ」
「そうしたものよね」
「うん、そうだね」
 こうしたことを二人で話した、すると
 前からだ、まるで雪女みたいにお肌が白くて。
 黒い膝まであるとても長い絹の様な髪の毛を持っている切れ長の目の女の人が来た。目は琥珀みたいに黒くて睫毛も長い。
 背は一六〇位、黒と金のブレザーにミニスカートといううちの学園でも人気の制服の一つを着ている。ネクタイは青でブラウスは白だ。
 脚がすらりとしていてとても奇麗だ、そして。
 唇は紅で小さい、お鼻も高い。その人が前から来てだ。
 そのうえでだ、僕の正面に来て微笑んで尋ねてきた。
「八条義和さんですね」
「はい」
 そうだとだ、僕はその驚く位に奇麗な人に答えた。
「そうですけれど」
「八条荘の管理人さんですね」
「今はそうしています」
「そうですか、それでは」
「あの、まさか」
 僕はその人の言葉を聞いて応えた。
「貴女は」
「堀江香織といいます」
 ここで名乗ってから頭を下げてきた。
「秋田から来ました。クラスは二年I組です」
「それで、ですね」
「今日から八条荘でお世話になります」
「わかりました、それじゃあ」
「母に言われてここに来ました」
 僕にこうもお話してくれた。
「父がいると聞いて」
「お父さんがですか」
「お医者様で何でも凄くお酒が好きだとか。私の実家は造り酒屋ですが」
「あの、お医者さんでお酒が好きですか」
「はい」
「それでその人の他の特徴は」
 自分でも何故かわからないけれどこの二つだけでまさか、と思った。この二つに当てはまる人も多いというのに。 
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