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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二十二話 秋田小町その六

「とんでもなくはあっても」
「そう言うことがね」
「変わったのかな」
「それに元々ね」
「元々?」
「親父さんのこと嫌いじゃないこともわかるよ」
「いや、嫌いだよ」
 このことははっきり言えた、僕も。
「あんな人間になりたくないから」
「いや、そうした意味じゃなくて」
「じゃあどういう意味かな」
「全否定じゃないよね」
「そう言われるとね」
 親父を全否定するかというとだった、これはだった。僕にしても。
「だから女好きで浪費家だけれど」
「それでもだよね」
「うん、いい加減でもあるけれど」
 それでもだ、あの親父は。
「人間としてやっちゃいけないことまではね」
「していないよね」
「卑怯でも卑劣でもないよ」
 例え下半身に人格がなくとも。
「よくアニメに出て来るみたいな壊れた奴とか」
「いるね、他人をぶっ壊したいとかいう奴」
「そういう人間ではないよ」
「他人を傷つけることはしないよね」
「だから人妻と幼女には手を出さないんだ」
 このポリシーは守っている、何があろうとも。
「そうしたことはしないよ」
「外道じゃないんだね」
「そんな。人を傷つけて楽しむみたいなことはね」
「絶対にしないよね」
「何があってもね」
 本当にこうしたことは守っている、親父は下半身があれで途方もない女好きでもだ。それでも最低限はなのだ。
「壊れてはいないんだ」
「借金もないって言ってたね」
「借金をする遊びは遊びじゃないって言ってるよ」
 このこともいつも言っている。
「借金は身を滅ぼすってね」
「だからだね」
「遊びは死ぬまでするものだってね」
「だから身を滅ぼさずに」
「そう、そう言ってるから」
 それで親父は借金をしない、家には今でもお金を入れてきている。僕も大家としてのお給料と料理、家もあるからいいって言ってもまだ大学も出ていないからと言って普通に結構以上な額を振り込んでくれている。
「借金もしないよ」
「暴力も振るわなくて」
 このことも確認された。
「そうだよね」
「そう、暴力は弱い人間がすることだってね」
「いつも言ってるんだね」
「よく学校の先生にいるけれど」
 何故か学校の先生には暴力を振るう人が多いと思う、それ位おかしな職場なのかなと本気で考えることがある。
「暴力もね」
「振るわないね」
「親父は僕にも女の人にもね」
 実を言うとエスエムについてはわからないけれど。そうした趣味があっても不思議じゃない親父ではある。
「暴力は振るわないよ」
「いいことじゃない」
「そうなるかな、やっぱり」
「そう思うよ、借金と暴力がないだけで」
「いいんだ」
「どんなに怒ってもビンタ一発で済ます」
 この例えが出て来た。
「それと何発も何発も殴る人じゃ全然違うよね」
「うん、確かにね」
 僕もそのことはわかって答えた。
「親父僕を殴ったことないよ」
「大家君間違ったことしないしね」
「だからかな」
「厳しく怒られたことはあるよ」 
 僕にしてもだ、そうしたことはあった。確か嘘を吐いた時だった。嘘は吐いていい嘘とよくない嘘がある、そしてその嘘はよくない嘘だと言われた。 
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