八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十二話 秋田小町その五
「いけるかな」
「気を使った方がいいけれどね」
「そうだね、畑中さんとお話しておくよ」
「そうしよう、ただ」
「ただ?」
「大家君最近随分色々な話題する様になったね」
僕にこんなことも言ってきた。
「アパートの管理人さんになったら」
「そうそう、入居してる人のこととか」
「その人達の奥にのこととか」
「今もイスラムのことお話してるし」
「お酒のこととかも色々ね」
「スポーツのこととかも」
「ううん、そういえばそうかな」
言われてみればだ、僕はだった。
考えている顔になってだ、皆に返した。
「入居している人達のことも考える様になったよ」
「それでだよ」
「いつも皆のこと考えてるから」
「それで話題もね」
「その皆のことが出て来て」
それで、というのだ。
「僕の話題も増えてきたのかな」
「大家君前はバスケと漫画と音楽と阪神タイガースとラノベの話メインだったわよ」
女の子の一人がこう言って来た。
「管理人さんになる前はね」
「そうだったんだ」
「それが今はね」
「それぞれの国のお話とか」
「そのアパートのこととか」
「入居している人のこととか」
「その人達がしていることとかね」
そうした話題が色々とだ、僕の口から出ているというのだ。
「そうなっているわよ」
「話題のレパートリーはね」
「かなり増えたよ」
「そうなってるわよ」
「そうなんだ、僕も変わったかな」
「あと親父さんのこと」
男子のクラスメイトのうちで茶髪の子が言って来た。
「最近明るく言ってるね」
「あの糞親父のこと?」
「うん、今までは困ってる感じでしかなかったけれど」
それが、というのだ。
「今は何処か落ち着いてて」
「そうなってるかな」
「うん、前から嫌ってる感じはなかったけれど」
最近はというのだ。
「今はそうなってるよ」
「そうかな」
「結局親父さんのこと嫌いじゃないの?」
「いや、とんでもない人間だよ」
それこそだ、あの親父はだ。
「もういつも言ってるけれど」
「女好きで浪費家で」
「そう、もう毎日遊んでて」
とにかくそれに尽きる親父だ。
「借金ないだけましっていう」
「そうした人でだよね」
茶髪のクラスメイトは僕にこうも言ってきた、それも楽しそうに笑って。
「暴力は振るわないしちゃんとお金は入れてくれる」
「うん、そうだよ」
「それで料理も家にいる時は作ってくれる」
「そうしたことはしてくれるよ」
「そうした親父さんだよね」
「そうだよ、暴力は本当に振るわないから」
僕が子供の時からだ、それはない。
「絶対にね」
「それじゃあまだね」
「最低ではないよ」
僕は自分から言った、親父のことを。
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