八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十一話 古代の都からその十
「かなり減ったの」
「掃討されたんですね」
「そう、だからね」
「それで実感としてはなんですね」
「知らないの」
その共産ゲリラ達の恐ろしさを、というのだ。
「センデロ=ルミノソだったかしら」
「何かややこしい名前ですね」
そのセンデロという言葉を聞いてだ、美沙さんはその眉を少し顰めさせて言った。
「言ったら間違えそうです」
「そうかしら」
「日本人にしてみれば」
「日本語では輝ける道になるのよ」
「あっ、名前自体はいいですね」
「テロリストはそちらには凝ります」
畑中さんがそのセンデロ=ルミノソという名前の日本誤訳に感心した素振りを見せた美沙さんにこう言った。
「自分達の名前には」
「そうなんですか」
「はい、何かと」
「じゃあ日本にいるテロリストも」
「赤軍派も革マル派もです」
そうした札付きの連中も、というのだ。
「正式名称はより長く」
「凝ったものなんですか」
「赤軍派は日本赤軍が正式名称です」
「大袈裟な感じですね」
「そうした意味で凝ります」
「それで革マル派も」
「革命的マルクス主義はといいます、そのまえに日本革命的共産主義者同盟だのつきます」
話を聞いていて寿限無寿限無の落語みたいだと思った、若しくは北朝鮮のやけに長ったらしい前置きの言葉か、将軍様への。
「そうした風になっています」
「やけに長かったりするんですね」
「そして自分達に誇りを持ちます」
「その変に凝った名前で」
「左様です」
「じゃあ名前だけご大層で」
「その行いはです」
ここで畑中さんはさらに否定的に言った。
「非道そのものです」
「犯罪者なのですね」
「国家権力に逆らうと言えば格好がいいですが」
その実はというのだ。
「無関係な人まで巻き込む」
「自己中な連中なんですね」
「自分達を絶対の正義と考え自分のことしか考えない」
まさに、というのだ。
「許せないエゴイスト達です」
「オウムもそうですよね」
詩織さんはこの連中を話に出した。
「あの宗教も」
「はい、まさにそれです」
「テロリストですね」
「自分達の為に関係のない人達を巻き込んで殺した」
「犯罪者ですか」
「それに他なりません」
それがオウムの正体だというのだ。
「格好のいいものではありません」
「テロリストはそれだけで、ですね」
僕もここで言った。
「格好が悪いんですか」
「関係のない人まで巻き込む」
そうしたこと自体が、という口調でだ。畑中さんは僕達に話してくれた。
「それで誇れるものがあるか」
「ないからですか」
「そうです、誇れない格好なぞ」
まさに、という口調での言葉だった。
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