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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二十一話 古代の都からその六

「今晩も楽しみにして下さい」
「わかりました」
 こう話してだ、僕は一旦部屋に戻ってだった。着替えて。
 それから部屋で勉強しているとだ、暫くして晩御飯を知らせるベルの音が鳴った。そしてそのベルの音が鳴ってから。
 食堂まで来るとだ、そこにはもう皆揃っていた、そして。
 新しい人もいた、その人は。
 腰までの長い黒髪に黒い切れ長の目で背は一六〇程でだ。
 白いシャツと青いジーンズの人がいた、胸が目立っていて手は短くて足が長い。均整の取れたスタイルだ。
 褐色の顔に穏やかな顔立ちで微笑んでいる、その人がいて。
 僕にだ、笑顔でこう言ってきた。
「大家さんですね」
「はい、それで貴女が」
「新しい入居者の」
 自分から話してくれた。
「チェリーリア=ノガミ=カレーラスといいます」
「カレーラスさんですか」
「チェチーリアと呼んで下さい」
 こう僕に返してきた、早速。
「ノガミでもいいですけれど」
「そうですか、じゃあ」
 僕はこう言われてだ、あらためて呼んだ。
「チェチーリアさんで」
「わかりました」 
 笑顔で僕に答えてくれた、そして。
 僕だけじゃなく皆にだ、その穏やかな笑顔で言って来た。
「宜しくお願いするわね」
「それでだけれど」
 ここでだ、チェチーリアさんに美沙さんが尋ねた。
「チェチーリアさんって何年生?」
「八条学園のですね」
「見たところ高校生だけれど」
「はい、三年生です」
「あっ、先輩ですか」
 美沙さんは三年生と言われた瞬間に言葉遣いをあらためた、この辺りは体育会系の部活にいるだけはあった。
「そうだったんですか」
「クラスはもう言ってもらいました」
「どのクラスですか?」
「D組とのことです」
「三年D組ですか」
「はい」
 美沙さんに対してだ、チェチーリアさんは笑顔で答えた。
「そう教えてもらいました」
「そうなんですね」
「あの、それでですけれど」
 モンセラさんもチェチーリアさんに敬語で言った。
「チェチーリアさんはペルーのどちらの」
「実は奥地でして」
「奥地っていいますとアマゾンの方ですか」
「いえ、アンデスの方の」
「あちらのですか」
「はい、マチュピチュの近くの村の生まれで」
「へえ、マチュピチュの」
 マチュピチュと聞いモンセラさんも目を瞬かせていた、勿論僕もだ。
「あそこのですか」
「そうなのです、そこで両親は学校の先生をしていまして」
 チェチーリアさんはこう僕達に話してくれた。
「それで私は奨学金を受けて」
「日本にですか」
「留学させて頂くことになりました」
 その辺りの事情もだ、僕達は知った。他ならぬチェチーリアさんの言葉から。
「大学もこちらに。そして」
「そして、ですか」
「祖国に戻るつもりです」
「そうなんですね、マチュピチュですか」
「マチュピチュにも行ったことがあります」 
「あっ、それでなんですけれど」
 マチュピチュの話を聞いてだ、僕はチャチーリアさんにそのマチュピチュのことを聞いた。無意識のうちに口が動いて。
「お聞きしたいことがあります」
「何でしょうか」
「はい、マチュピチュはどうした場所でしょうか」
「一口で言うと寂しい場所です」
 これが僕達に話してくれたマチュピチュの真実だった。
「あの場所は」
「寂しいんですか」
「遺跡だけがあって。確かに学者の方は来られますが」
 それでもというのだ。 
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