こけし
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第二章
「えっ、こけし!?」
「こけしがどうかしたの?」
「御免なさい、ちょっと」
強張った声でだ、梨紗に言うのだった。
「私こけし駄目なの」
「こけしが?」
「見ているだけで怖いの」
梨紗に対してこうも言った。
「だからね」
「それでなのね」
「うん、お家に入ることは」
駄目だというのだ。
「折角呼んでくれたけれど」
「じゃあ喫茶店か何処か行く?」
「悪いわね」
「いいわよ、けれどね」
首を傾げさせて言う梨紗だった。
「何でこけしが嫌いなの?」
「嫌いじゃなくて怖いの」
「どうして怖いの?」
「何でか知らないけれど子供の頃からね」
その時からだというのだ。
「それこそ物心ついた時から」
「ずっとこけしが怖いの」
「それで近寄ることもね」
そうしたことすらというのだ。
「駄目なのよ」
「それはかなりのものね」
「自分でもどうしてかわからないのよ」
こけしが嫌いな理由がというのだ。
「けれど駄目なのよ」
「まあとりあえずね」
ここでだ、こう千代に言った梨紗だった。
「喫茶店にでも行ってね」
「そこで、なのね」
「お話しよう」
こう言うのだった。
「そのこけしが怖いことについてね」
「そうね、それじゃあ」
千代も梨紗の言葉に頷いてだ、そしてだった。
二人で梨紗の家の近くにある喫茶店に入ってだ、そこでコーヒーを飲みながら向かい合って話をはじめた。
そこで梨紗はだ、こう千代に言った。
「あんたの怖がり方はね」
「それは、っていうのね」
「普通じゃないわ」
もうそう言っていいまでだというのだ。
「どう見てもね」
「そうよね、自分でもそう思うわ」
「もの心ついた時からよね」
「そうなの」
それこそというのだ。
「本当に怖くて仕方がないの」
「それって幽霊かお化け怖がるみたいじゃない」
「そうかもね」
「自分でもわかってるのね」
「そうなの、とにかく怖くて」
「見たくないし近寄りたくないし」
「こけしってそこにあるだけよ」
置いて飾るだけのものだとだ、梨紗は千代に話した。
「だからね」
「怖がることもなくて」
「そう、気にすることもないわよ」
「けれどそれがね」
「千代ちゃんにとってはなの」
「怖くて仕方がないものなの」
到底、というのだ。
「それがどうしてかわからないけれど」
「そこよ、怖がるからにはね」
そこにだと言う梨紗だった。
「理由があるでしょ」
「怖がる根拠が」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「絶対にそうだから」
「怖がる理由には根拠がある」
「何でも根拠があるのよ」
怖がるにしても他のことにもとだ、梨紗は千代に言うのだった。
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