八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

「何ならもう一升飲めるが」
「あの、もう一升って」
「お酒は好きだ」
「好きでも何でも」
「だからどれだけでの飲めるが」
「幾ら何でも二升は飲み過ぎですよ」
「だからこれで止めているのだ、毎日な」
　そうしているというのだ。
「一升でだ」
「一日一升だけでも凄いですよ」
「そうか」
「そうですよ」
「父もそうだが、兄も」
「えっ、お二人もですか」
「それだけ飲んでいる」
　一日で一升、というのだ。
「普通にな」
「お酒飲む家系なんですね」
「そうだ」
　まさにという返事だった。
「だからだ」
「それで、ですか」
「これ位は何ともない」
「あの、最高でどれ位」
「一日で三升飲んだがだ」
「三升、ですか」
「全く平気だった」
　驚くべき言葉だった、井上さんは何と酒豪だった。
「幾ら飲んでも酔わないのだ、私は」
「ザルなんですね」
「うむ、そうなるか」
「いや、それはもう」
　話を聞いていてもだった。
「相当ですよ」
「酔わないからだ」
　それで、とも言う井上さんだった。
「飲むことは好きでもそれは寂しいわ」
「酔わないことは」
「具体的にどんな感覚かわからない」
「人間の会話？」
　首を傾げさせてだ、こう言ったのは詩織さんだった。
「沙耶香先輩凄過ぎますよ」
「そうか」
「はい、三升ですよね」
「最高でな」
「それだけ飲まれてもですか」
「酔わなかった」
　井上さんは詩織さんにもこう言った、実際に今も飲まれているけれど全くだった。酔っている気配は全くない。
　それでだ、こうも言ったのだった。
「今もだ」
「そうですか」
「しかし味は好きだ」
　お酒のそれは、というのだ。
「だからこうして飲んでいるのだ」
「そうですか」
「では今日はだ」
　先輩はここであらたまった、そしてこう皆に言った。
「私の歓迎をしてくれて有り難う」
「それでは」
「乾杯だな」
「そうですね、それじゃあ」
　僕が井上さんに応えてだ、そpのうえで。
　皆で乾杯して井上さんの入居を祝った、そうしてからまた酒を楽しんだのだった。


第十九話　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１４・１１・４