八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第十九話 風紀委員その四
「理性は危ういものよ、特に男子の」
「それで僕は」
「ましてやあの人の息子よ」
また言われた、このことを。
「何が起こってもおかしくないわ、だから私が貴方の暴走を防ぐ為に」
「八条荘にですか」
「入居することにしたのよ」
「それで募集されて」
「認めてもらったわ」
そうした経緯で、というのだ。
「執事さんに」
「わかりました」
「では今日からよ」
この辺りはいつも通りだった。
「入らせてもらうわ」
「じゃあそれで」
「動じていないわね」
井上さんはその僕にこう言っても来た。
「強がりでもないわね」
「というか」
「というかとは」
「わかりましたと言うしか」
まさにだ、それしかだった。
「ないですから」
「だからだというのね」
「はい」
それでだと答えたのだった。
「あまり」
「そうなの。けれど」
「けれどですか」
「僕は別に」
こう井上さんに言った。
「井上さんが思われている様なことは」
「百聞は一見に然ず」
井上さんの声は厳しかった。
「だからよ」
「それで、ですか」
「私は聞くより見ることにしているのよ」
それ故にというのだ。
「だからこそよ」
「八条荘にですか」
「そう、そして」
井上さんの目が光った、それも剣呑に。
「何かあったのなら」
「その時は」
「容赦しないわ」
はっきりと言い切った、このことを。
「一切ね」
「先輩も武道を」
「武道はしていないわ」
井上さんは僕のその問いは否定した。
「私は美術部よ」
「ちなみにそちらは副部長なんだ」
ここで宮下君が説明を入れてくれた。
「男の人が部長さんでね」
「あれっ、じゃあ風紀部と」
「一緒だよ」
風紀部は男女共に部長がいるからだ。尚そうした学校の雑務を担当する部の部長さんは委員長さんとも呼ばれる。だから井上さんを風紀委員長とも言っていいのだ。
「立場はね」
「そうだね」
「美術部は男女混合だから」
「副部長さんなんだ」
「そうなんだ、それで部長さんの絵はね」
それはというと。
「かなり美味いんだ、これが」
「へえ、そうなんだ」
「特にアニメのキャラクターのイラストが得意で」
宮下君は僕にこのことも話してくれた。
「人気があるんだ」
「そうなんだ」
「そうだよ、意外だよね」
「うん、何か武道をしているイメージはあるけれど」
「体育の成績もいいけれど」
それでもとだ、宮下君は井上さんをちらちらと見ながら僕に話してくれる。僕はその話を頷きながら聞いた。
「文化系なんだ」
「そうだったんだ」
「絵はいいわ」
井上さんも微笑んで言って来た。
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