八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第十八話 馬に乗った女の子その十四
「何はともあれです」
「はい、何でしょうか」
「これから宜しくお願いしますわ」
あらためてだ、挨拶をしたのだった。
「同じ八条荘の住人として」
「はい、そのことは」
「一緒に甲子園も行きましょう」
「甲子園?」
「野球はお好きですの?」
「野球ですか。嫌いではないですけれど」
ジューンさんは円香さんの野球はどうかという問いに首を深く左に傾げさせた。そしてこう僕達に言ってくれた。
「スポーツは乗馬をしていまして。観戦はラグビーです」
「そちらですのね」
「ニュージーランドでは野球はあまりしないです」
「そうなのですわね」
「オーストラリアや日本程には」
普通にオーストラリアの名前が出る、このことからもオーストラリアとニュージーランドの関係の深さが伺えた。
「盛んではないです」
「ラグビーですか」
「はい、第一は」
やはりこれだというのだった、
「ニュージーランドにおいてはそうです」
「オールブラックスですね」
「あのチームは有名ね」
詩織さんも言う。
「私も知ってるわ」
「ご存知ですか」
「ええ、試合の前に踊るわよね」
「あれは戦いの前に踊るものです」
ジョーンさんは上機嫌でこのことも話してくれた。
「マオリ族の舞です」
「戦いの」
「そうです」
「それを踊って」
「それからです」
試合に入るというのだ。
「そうした舞です」
「あれがなのね」
「私はあの舞いが好きでして」
マオリ族のその戦いの前の踊り、それがというのだ。
「よく観ます」
「あの舞は確かにいいいわね」
「ええと、確か」
「田村詩織よ、詩織って呼んでね」
「詩織さんもあの舞はお好きですか」
「結構ね、ただラグビーはね」
このスポーツ自体はともてだ、詩織さんは言った。
「あまり観ないけれどね」
「そうなのですか」
「まあ野球は嫌いじゃないのよね」
「そうです」
ラグビーが一番にしてもとだ、ジョーンさんは詩織さんのその問いに答えた。
「そちらも」
「なら甲子園行きましょう」
「野球のグラウンドですね」
「あそこはいい場所だから」
それで、とだ。詩織さんはジョーンさんに言うのだった。
「一緒にね」
「それでは」
「また甲子園行くんだ」
僕は詩織さんの話を聞いて言った。
「今度の日曜は甲子園で試合ないけれど」
「まだ先よ」
「ああ、そういう意味での今度なんだ」
「そう、だからね」
それで、というのだ。
「その時にね」
「また皆で甲子園に行って」
「阪神を好きになってもらうのよ」
「何か阪神はね」
僕は詩織さんに今から楽しそうにしている顔を見て言った。
「皆に愛されるチームなんだね」
「大家さんもそう思うでしょ」
「そう言われるとね」
その通りだった、僕にしても。阪神ファンであるだけにそう思えない筈がなかった。
「そうだね」
「そうでしょ、じゃあね」
「甲子園にだね」
「また行きましょう」
ジョーンさんを入れてだとだ、こうしたことを話してだった。
僕達はジョーンさんを迎え入れて楽しい夕食の時を過ごした、そのうえでまた一日を終えて新しい一日に向かった。
第十八話 完
2014・10・27
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