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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第十八話 馬に乗った女の子その十三

「それで」
「そうなのですね」
「先程メールで確認しましたが」
「どうでしたか?」
「元気とのことでした」
 ジョーンさんは明るい、それでいて気品のある笑みで僕の問いに答えてくれた。牧場の娘さんというよりは貴族の令嬢といった感じの笑顔だった。
「幸い」
「そうですか、それは何よりですね」
「はい、ただ毎日です」
「元気かどうかはですか」
「チェックしています」
 そこまで心配しているというのだ。
「牧場の皆も」
「そうされてますか」
「日本に来てから。とはいっても三日前に来たばかりです」
「ここに来るまではどうしていたの?」
 千歳さんはジョーンさんにその三日間のことを尋ねた。
「何処にいたの?」
「はい、ホテルにいました」
「そこにいてなの」
「ここに入居する手続きをして。馬達を待っていました」
「入学手続きもよね」
「そちらもしていました」
 そうだったというのだ。
「ですから」
「そうだったのね」
「それで今日から入居しまして」
「明日から」
「はい、学校にもです」 
 僕達が通っている八条学園、あそこにというのだ。
「通わせてもらいます」
「わかったわ、ただ」
「ただ?」
「ジョーンさんの喋り方って本当にお嬢様ね」
 千歳さんはこのことも言った。
「気品があって。育ちのよさが感じさせられるわ」
「そうでしょうか」
「そんなに大きな牧場だったの?」
「確かに大きいですがかろうじて黒字という」
「それ位だったの」
「そうでした」
「じゃあご両親の教えがよかったのね」
 躾やそうしたことがというのだ。
「それでなのね。小夜子さんはもう家元さんの家だから」
「はい、私は物心ついた時からいつも言われていました」
 そうだったとだ、小夜子さんも千歳さんに応えて言ってきた。
「作法や言葉使いのことは」
「それこそいつもよね」
「言われていまして」
 それで、というのだ。
「厳しく言われていました」
「だから身に着けたのよね」
「私の場合は」
「円香さんの場合は」
「家が宗教関係なので。穏やかにとですわよ」
 円香さんはいつもの様にその手に扇を持ちつつ千歳さんに答えた。
「気品はわたくしの趣味ですけれど」
「言葉使いって人間性、生い立ちも出るから」
「だから私も、ですか」
「ええ、育ちがいいのよ」
 経済的な意味ではなくだ、気品という意味でだ。
「お嬢さんね、本当に」
「それもいい意味で」
 こう言ったのはモンセラさんだった。
「そうね」
「牧場でいつも羊を追ったり馬に乗っていますが」
 ジョーンさんはお嬢さんと言われてもだ、首を傾げさせるだけだった。
「私は」
「だから。生き方がね」
「そうなのよ」
 千歳さんとモンセラさんはそのジューンさんにまた言った。
「お嬢様なのよ」
「お金とかお仕事の問題じゃないの」
「生き方、振る舞いがね」
「お嬢様なのよ」
「そうなのですか」
 ジューンさんはわからないという顔をするばかりだった、けれどそのジューンさんにだ。円香さんがこう言った。 
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