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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第十八話 馬に乗った女の子その七

「旦那なんて」
「宜しいですか」
「はい、ただ様付けはですね」
「八条家にお仕えしていますので、私も」
「だからですよね」
「このことは守らせて頂きます」
「このことは決まってるんですか?」
 畑中さん達もぼkを様付けするので問い返した。
「様付けは」
「はい、使用人達の間で」
「八条家の誰かが決めたんじゃなくて」
「戦前からですので」
「あっ、戦前からですか」
「はい、戦後もこの慣習が続いていますので」
 階級があった戦前までと同じく、というのだ。
「ですから」
「それでなんですか」
「そうです、私共の間で決まっていまして」
「だから僕もですか」
「様付けで呼ばせて頂きます」
「そうですか、ただ旦那様とは」
「お呼びになってはいけませんか」
「旦那とかとても」
 僕は少し苦笑いになって言った。
「違うっていいますか、そんな昔の貴族や地主みたいに」
「ではお名前で」
「はい、呼んで下さい」
 畑中さんみたいにとだ、僕は答えた。
「それでお願いします」
「わかりました、では義和様」
「はい」
 この呼ばれ方にはだ、僕は微笑んで答えた。
「それでお願いします」
「前川と申します」
 ここでお名前を名乗ってくれた。
「馬丁を務めさせて頂きます」
「こちらこそ宜しくお願いします」
「それでは、それと」
「それと?」
「もう入居される方は来られています」
 その人は、というのだ。
「こちらに」
「そうなんですね」
「はい、お会いになられますね」
「そうさせてもらいます」
 それ以外の選択肢は考えられなかった、ここでは。
「今から」
「わかりました、それでは」
「どちらに」
「先程までこちらにおられまして」
 そして、というのだ。
「今はお屋敷の中に」
「アパートの中にですね」
「そちらにです」
 その人がいるというのだ。
「ですから」
「わかりました、今から言ってきます」
「その様に」
 僕は前川さんと話してだ、そしてだった。
 八条荘の中に入った、その八条荘の中にだった。
 見事な縦ロールの、ベルサイユの薔薇の様なブロンドの髪に緑の澄んだ瞳に白く透き通った肌の顔にだ。鼻は高く唇は薔薇色だ。長身で胸があってかつ脚は長くすらりとした印象だ。赤い上着と黒のブーツ、それに白のズボンで。
 手には乗馬鞭がある、その人が僕に言って来た。
「大家さんですね」
「はい、このアパートの」
「はじめまして」 
 優雅に微笑んでだ、女の人は僕に挨拶もしてくれた。
「ジョーン=ヤハギ=スチュワートと申します」
「ヤハギさんですか、それともスチュワートさんと」
「ジョーンとお呼び下さい」
 こう僕に言ってくれた。 
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