八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第十八話 馬に乗った女の子その三
「正直言って」
「その漫画はそうしたキャラばかり」
「凄いですね、ある意味」
「すぐに怒る」
まさに即座に、というのだ。
「火が点いたみたいに」
「登場人物は皆そうですか」
「原作者がいる漫画だけれど」
エリザさんはこのこともお話してくれた。
「日本の漫画で」
「あっ、わかりました」
日本の料理漫画で原作者がいるとなるとだ、それでわかった。もう何十年も続いている新聞記者が主人公の料理漫画だ。
「どの漫画か」
「そうなの」
「確かにあの漫画はすぐ激怒するキャラばかりですね」
しかもだ、それに加えて。
「原作者は有名です」
「日本でも」
「お店に言って口に合わなかったら怒鳴り散らしていたとか」
「それ営業妨害でしょ」
テレサさんはその話を聞いてすぐにこう突っ込んで来た。
「うちのお店ではそうしたお客さんすぐに摘み出してたわ」
「摘み出したら出したで接客がなってないって触ぐんだよ」
「最低のお客さんね」
「うん、お客さんとしても人間としてもね」
正直付き合いたくないタイプだ、どんな生き方をしたのかとさえ思う。
「僕もどうかと思うから」
「そういう人って日本にもいるのね」
「何処にもいるんだよ、残念なことに」
心からの言葉だ、僕の。
「日本にもね」
「本当に何処にでもいるのね」
「そうなんだ、ああした人はお店に来て欲しくないね」
切実な言葉だった、僕の心からの。
「僕がお店をしていても」
「ご安心下さい、その様なお客様はです」
ここでも畑中さんが言ってくれた、本当に頼りになる人だ。
「帰って頂き。そして」
「そのうえで、ですか」
「以後も静かにして頂きますので」
「何か怖い言い方ですね」
「お命には危害を及ぼすことはありません」
流石にそこまではいかないという言葉を聞いてだ、僕は正直ほっとした。流石にそこまではと思うからだ。
「いや、よかったです」
「命はです」
それはというのだ。
「この上なく大事なものなので」
「そうした人でもですね」
「流石に道を完全に誤ったなら」
そうした人なら、というのだ。
「私はそちらは知りませんがどうなるかです」
「わからないですか」
「何分世の中は様々な方がおられますし」
「まさかと思いますけれど」
ここで僕は嫌な予感がしてこう言った。
「八条家にも」
「八条グループはマフィアではありません」
ここでだ、畑中さんは僕だけでなく皆にもはっきりと答えてくれた。
「裏の仕事はありません」
「そうですよね」
僕の知る限りもなかった、とりあえずは。
「やっぱり」
「はい、しかし」
「それでもですか」
「裏のビジネスはしていませんが」
「色々とですか」
「処理する必要があるのなら」
「何かとですね」
「そうした場合はです」
それこそ、というのだ。僕に話してくれた。
「私も聞く限りですが」
「あの影の実行部隊の人達ですか?」
「いえ、あの方々はあくまで表の仕事でして」
「影でもですか」
「裏ではないので」
それで、というのだ。
「そうした方々は。おそらくは」
「また別にですか」
「おられます」
そうだというのだ、どうも八条家にはそうした人達もいるらしい。
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