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頭上の戦士

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第二章


第二章

「だからな。今はな」
「ええ、落ち着いてですね」
「御前は爆撃に専念しろ」
 そうしろとだ。爆撃手に話すのである。
 そしてだ。隣にいる副機長に言うのだった。
「ここからはいつも通りな」
「機長がですね」
「ああ、ドイツ本土を出るまでは俺が操縦する」
「わかりました。それじゃあ」
「ここからだ大事なんだ」
 こうだ。機長は真剣な顔で前を見ていた。
「生きて帰る為にはな」
「そうですね。それじゃあ」
「おい、皆配置についてるな」
 機長は今度は銃手達に尋ねた。
「すぐに戦闘機も来るぞ」
「ええ、わかってます」
「もう配置についてます」
「安心して下さい」
 見ればその通りだった。上部銃座にも下部銃座にも後部銃座にもそれぞれついている。当然側面の機銃にもだ。それぞれついている。
 どの機体もそうなっていた。そうしてだった。
 遂にだ。上部銃座の銃手が言ってきた。
「来ました!」
「何が来た!」
「メッサーの109、それにフォッケウルフです!」
 どちらもドイツ軍の主力戦闘機だ。エンジンは単発である。
「数は百位ですね」
「少ないな」
「後でまた来るでしょうね」
「そうだろうな。メッサーの110とかな」
 こちらは双発の戦闘機である。爆撃機の迎撃で有名である。
「そういうのが出て来るだろうな」
「でしょうね。じゃあ俺達はですね」
「いいな、びびるなよ」
 これが機長が銃手達に言うことだった。
「俺もだけれどな」
「はい、御願いしますね」
「編隊から出たら終わりですから」
 一機になればそこにドイツ機が群がってこぞって攻撃される。この辺りは鮫の群れの中に放り込まれた場合と同じである。言うならば戦闘機は空を舞う鮫なのだ。
 その鮫達のことを知っているからだ。機長は言うのだった。
「だからだ。俺も腹括ってやるな」
「御願いしますね」
 副機長もこう彼に言う。
「今回も」
「任せろ。それにだ」
 上を見てだ。護衛戦闘機達を見た。
「連中もいてくれるしな」
「ですね。ムスタングの連中がですね」
「今日も頑張ってくれますね」
「頼りにさせてもらいますよ」
「ああ、連中も信じてな」
 そうしてだというのだ。
「今日もこのままのコースで爆撃するぞ」
「はい、わかりました」
「俺達も落ち着いていきます」
 こう話してだった。彼等は爆撃コースを守って敵機からも自分達を守りにかかった。その彼等にだ。
 護衛戦闘機達もだ。旋回しそのうえでだ。ドイツ機に向かう。彼等は一部が爆撃機の護衛についたまま残り主力がだ。
 ドイツ機に襲い掛かる。そうしてだった。
 格闘戦を挑む。二機で一機を囲む様にしてだ。数も頼りにしてだ。
 後ろに回り上から急降下してだ。ドイツ機を撃墜していく。
 ドイツ機は一機、また一機とだ。撃墜されていく。格闘戦を挑もうとするが。
 P-51のパイロット達はだ。こう話し合った。
「おい、わかってるな」
「ああ、ドイツ機は運動性能が落ちるからな」
 P-51に比べてだ。そうなのだ。
「それならこっちのものだ」
「挑発に乗ってくれたな」
 それをよしとしてだ。彼等は。 
 そのドイツ機をだ。さらに撃墜していく。ドイツ機が一機に向かうとだ。その一機は素早く旋回しドイツ機を惑わしその上からだった。 
 別のP-51が襲い掛かり撃墜する。ドイツ機は炎を噴きそこからパイロットが命からがら脱出しそうしてだ。パラシュートが出た。
 
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