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頭上の戦士

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第三章


第三章

 それを見てだ。P-51のパイロット達が言う。
「ちっ、生き残ったな」
「まあ戦闘機の数減らしていけば同じだしな」
「精々また出て来いよ」
「また撃墜してやるからな」
 こんなことを言ってだった。彼等は。
 別のドイツ機に向かう。メッサーシュミットもフォッケウルフもだ。
 彼等は撃墜されていく。そうしてだった。
 ドイツ機の数は減り残ったのはアメリカ機だけだった。爆撃隊は無事爆撃を終えそのうえでだ。ドイツ本土からイギリスに戻る。その中で。
 あの爆撃機の機長がだ。こう乗組員達に話した。
「今日も生き残れたな」
「ええ、無事ですね」
「撃墜された機体は殆どありませんね」
「作戦成功ですね」
「大成功だな。これでな」
 どうかとだ。機長は満足した顔で言った。
「ブレーメンの工業地帯は壊滅だ」
「ええ、これでまた一つドイツは国力を落としましたね」
「この調子でドイツの国力を消耗させていって」
「それで疲弊させて勝ちましょう」
「絶対に」
「ああ、勝つのは俺達だ」
 機長はまた満足した顔で言う。
「戦略爆撃で勝つぞ」
「そうしましょう」
「是非共」
 こうしたことを話してだ。そのうえでだ。
 彼等は上を見てだ。P-51の編隊も見る。彼等もだ。
 その数を殆ど減らさずだ。意気揚々と帰還している。その彼等を見てだ。
 機長はだ。また言った。
「戦闘機がいてこそだな」
「ええ、まさに守護天使ですよね」
「俺達の」
「あの連中がいないとな」
 満足した顔でだ。機長は話すのだった。
「俺達死んでるだろうな」
「死なないまでも相当やられてましたよね」
「最初の頃は二割近くやられてましたしね」
 戦略爆撃を開始した当初はだ。護衛戦闘機をドイツ本土まで送られなかったのだ。護衛戦闘機の航続距離の問題でだ。
 それでドイツ機に撃墜されていたのだ。しかしだ。
「けれど連中が来てくれるようになってですね」
「俺達こうして無事作戦を遂行できるようになりましたからね」
「本当によかったですよ」
「今度もだな」
 また言う機長だった。上を見上げながら。
「あの連中がいてくれたらな」
「ええ、作戦成功ですね」
「無事に帰還できて」
 彼等はだ。護衛戦闘機を心から頼りにしていた。そのうえでだ。
 作戦を遂行していった。爆撃機にとって護衛戦闘機達はいなくてはならない存在になっていた。しかしその中でだ。ある日のことだ。
 彼等は基地の司令から作戦を告げられてだ。驚きを隠せなかった。
 それでだ。作戦を告げられた滑走路においてだ。司令に口々に言うのだった。
「そんな、戦闘機なしですか」
「護衛なしでどうするんですか」
「ドイツ機はまだまだ多いんですよ」
「それで護衛なしでいったらそれこそ」
「俺達どれだけやられるか」
「しかしこれは決まったことだ」
 司令もだ。苦い顔で述べる。
「既にだ」
「上の方で、ですか」
「決まったんですか」
「ムスタングもサンダーボルトもだ」
 そのP-51だけでなくだ。P-47もだというのだ。
「今は別の場所に出る」
「それも動けるのは全部ですか」
「俺達が行くエッセンじゃなくてですか」
「ドルトムントに」
「そうだ。そこに出る」
 それでだ。彼等は今回は来られないというのだ。
 
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