頭上の戦士
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第一章
第一章
頭上の戦士
今日もだ。イギリスから彼等は飛び立つ。
B-17フライングフォートレスに乗りだ。彼等はドイツ本土に向かう。
巨大な四発の爆撃機が次々に空に出て行く。その彼等は基地の上空で編隊を組みそれからドイツに向かう。その彼等がであった。
その機体の中でだ。こんな話をしていた。
「今日の爆撃場所は何処ですか?」
「ドイツ本土ですよね」
「ああ、ブレーメンだ」
そこだとだ。機長が銃手達に話す。
「そこの工業地帯だ」
「あそこですか。前にも爆撃しましたよね」
「それでも今度もですか」
「爆撃仕掛けるんですね」
「向こうもしぶといからな」
敵であるドイツ軍もだとだ。機長は言う。
「だから奴等が降伏するまで何度でもやってやるさ」
「何度でもですか」
「しつこい位にやるんですね」
「戦争はしつこい方が勝つんだよ」
機長はこう彼等に返す。言いながら機体をドイツに向かわせる。三百はいる爆撃機の全てが同じくドイツに向かっていた。
「だからだよ。何度も何度もな」
「爆撃するんですね」
「俺達が出撃して」
「そうだよ。だから行くぞ」
「ええ、わかりました」
「それじゃあ」
こんな話をしてだ。彼等は飛んでいた。その彼等にだ。
通信が入って来た。それはこう言ってきていた。
「もうすぐ来るからな」
「ああ、今回もか」
「そうさ。だからそっちは安心して爆撃してくれ」
こう通信が来ていた。
「だからな」
「頼むぜ。猟犬共は今日も出て来るだろうからな」
「あいつ等も必死だからな」
機長にだ。通信の相手は笑いながら返してきた。
「自分達の国に爆弾なんて落とされたくないだろ」
「それは当然だな。誰でもな」
「だからだよ。奴等来るぜ」
笑いながらだ。通信の相手は機長に話す。
「次から次にな」
「だからな。今回もな」
「ああ、わかってるさ」
こうした話をしてだった。通信でのやり取りが終わった。そうして程なくしてだ。
爆撃隊の頭上にだ。彼等と同じ程の数の小型の戦闘機が来た。流れる様なシルエットの痩せた機体だ。その機体を見てだった。
爆撃機の銃手達はだ。頼もしそうに言うのだった。
「よし、ムスタングか」
「今日も来てくれたな」
「これでルフトパッフェも怖くないぜ」
「安心して爆撃ができるな」
「サンダーボルトでもムスタングでもな」
機長もだ。コクピットから彼等を見つつ話すのだった。
「護衛がいてくれるってのは有り難いよな」
「ですよね。B-17は確かに重装備ですけれどね」
「それこそ針鼠みたいに機銃がありますし」
「装甲も厚いですけれど」
だからこそ空の要塞と呼ばれているのだ。ドイツ軍にしてもこの機体を撃墜するには苦労している。太平洋でも日本軍が苦戦している。
「それでも。撃墜される時はされますからね」
「ドイツの連中も必死で来ますから」
「どうしてもですね」
「そうだよ。だからな」
それでだとだ。機長は笑って話す。
「護衛戦闘機は有り難いよ」
「本当にね」
「連中がいるから俺達生きていられるし」
「今日も頼むよって言いたいですよ」
頼もしい目でだ。彼等は自分達の上を飛ぶP-51の編隊を見ていた。彼等はアメリカ軍特有のへの字の編隊を組み上下にゆっくりと動いて飛んでいた。
その彼等と共にだ。爆撃隊はドイツ本土に入った。すると暫くしてだ。
まずは下からだ。歓迎の挨拶が来た。
高射砲の砲撃だった。爆撃隊の下で派手に爆発が続いて起こる。
それを見てだ。爆撃手がたまりかねた口調で言う。
「うわ、今日も派手に挨拶してくるな」
「安心しろ。ここまでは届かないからな」
機長はこう言って爆撃手を安心させた。
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