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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第十六話 ある晴れた日にその三

「楽園じゃないよ」
「そうなのね」
「嫌なこと、苦しいことだってあって」
「皆その中にいるのね」
「それでね」
 僕はさらに言った。
「部活の話に戻るけれど」
「ええ、熱心にやってて」
「確かに暴力やいじめは嫌われてるけれど」
「それでもなのね」
「嫌な部分もあるよ」
 僕はこうモンセラさんに話した。
「このことは憶えておいてね」
「ええ、わかったわ」
「ただ、モンセラさんはね」
「私は?」
「まあいじめられるタイプじゃないかな」
「そういうの嫌いだから」
 モンセラさんは僕にこう返してきた。
「勿論いじめることもね」
「それは何よりだよ」
「いじめって何処にでもあるけれど」
「メキシコにも?」
「あるよ、だから悪い奴は何処にもいるでしょ」
「うん、確かにね」
 さっき話した通りだ、本当にそうしたことをする奴は何処にでもいるけれど今度は僕がモンセラさんに言われた。
「だからメキシコでもなんだ」
「いじめはあるわよ」
「そういうことだね」
「うん、ただ私はいじめられてたから」
「えっ、そうだったの!?」
 プロレスをしているのにだ、僕はまさかと思った。
「モンセラさんいじめられてたの」
「そうよ、子供の時はね」
 僕にだ、モンセラさんは彼女の子供の頃のことを話してくれた。
「近所の子に。それでいじめられるのが嫌で」
「若しかして」
「そうよ、ルチャ=リブレはじめたの」
 つまりプロレスをというのだ。
「強くなったらいじめられないって思って」
「そうだったんだ」
「そう、意外だった?」
「いじめられていたことがね」
 今日会ったばかりだけれど想像もしていなかったからだ。僕はこう答えた。
「信じれないよ」
「ルチャ=リブレをしたことじゃなくて」
「そう、そのことはね」
 到底というのだ。
「信じられなかったよ」
「そうなのね」
「ただね」
 僕はモンセラさんにさらに言った。
「ルチャ=リブレをはじめた理由はわかったよ」
「私がなのね」
「うん、わかったよ」
 そのことはとだ、僕はモンセラさんに話した。
「よくね」
「それは何よりね」
「ただね」
「ただ?」
「一つ思うことはね」 
 それは何かというと。
「それでいじめられなくなったのかな」
「うん、喧嘩してやり返したらね」
 それで、というのだ。
「いじめられなくなったよ」
「そうなのね」
「そう、そうなったから」
 だからだとだ、モンセラさんは僕に話してくれた。 
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