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天然格闘少女

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2部分:第二章


第二章

「彼氏っていうと」
「だから。彼氏よ」
「彼氏。いないの?」
「そんなの考えたことなかったけれど」
 これが彼女の現実であった。
「ええと。彼氏って」
「だから。あんたももう十七でしょ」
「花の十七歳」
 少なくとも青春と言ってもいい年齢であるのは間違いない。何かに打ち込むこともあれば恋を知る年齢である。華やかな青の時代である。
「それで何もしないっていうの?」
「彼氏の一人や二人どうなのよ」
「そう言われても」
 困った顔を見せる涼花であった。
「ちょっと」
「ちょっとじゃなくてよ」
「そっちもちゃんとしなさいよ」
 周りの言葉が真面目なものになる。
「わかってるの?そこんところ」
「どうなのよ」
「どうなのよって」
 応える涼花の顔がさらに困ったものになっていた。
「私そんなことは」
「考えたことないの?」
「全然」
「言われたのもはじめてだし」
 これが現実であった。
「ちょっと、やっぱり」
「やれやれ。武道もいいけれど」
「そこんところもしっかりしなさいよ」
 皆ここで呆れることになってしまった。
「恋せよ乙女」
「命短しってね」
 何処かのオペラの登場人物かゲームのキャラクターの言葉を思わせるものであった。
「それもあれよ。恋をするにはよ」
「恋をするには?」
「いい男とすることよ」
 友人達はこう彼女に言うことも忘れない。
「いいわね。いい男と恋をするのよ」
「それもいい恋をね」
「いい男といい恋を」
 涼花はそれを聞いてとりあえずはきょとんとした顔になった。今一つ以上にわからないといった顔で。その顔で皆の話を聞くようになっていた。
「するの?」
「間違ってもいい加減な男と恋をしたら駄目よ」
「そう、例えば」
 ここで彼女達が出す名前といえば。この名前であった。
「今鳥暢雄みたいなのはね」
「絶対に駄目よ」
 顔を顰めさせてこう涼花に話すのであった。
「絶対にね。いいわね」
「あんな軟派男にはね」
「軟派男なの、今鳥君って」
 ところがであった。肝心の涼花はどうかというとそれを言われてもやはりきょとんとした顔になったままである。わかっているのかいないのかというと何処をどう見てもわかっていない顔をしている。その表情が実に初々しいがそれ以上に何かもどかしいものも見えていた。
「そうだったの」
「あのね、あいつの何処がそうじゃないって言えるのよ」
「軟派じゃないって」
 友人達は今の涼花の言葉に顔を顰めさせた。そうしてそのうえで彼女に対してまた語るのであった。どうしても語らずにはいられないといった顔で。
「しょっちゅうあちこちの女の子に声ばかりかけて」
「しかも喧嘩はからっきしだし」
 女の子達の顔は顰められたままであった。
「それでどうしていいって言えるのよ」
「そこんところがずれてるのよね、涼花って」
「今鳥君が別に悪いようには思えないけれど」
 しかし涼花はきょとんとした顔をそのままに語るのだった。
「別に」
「やれやれ。こんなにおぼこいんじゃ大変ね」
「全くよ」
 女の子達は今度は呆れた顔になった。言うまでもなく涼花があまりにも何もかもを知らないのでそれで呆れているのである。やはりこれしかなかった。
 
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