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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第十三話 バリ島からの女の人その九

「それって」
「そうなるかな」
「だって借金は作らないし暴力は振るわないのよね」
「どっちも絶対にね」
「それで大家君にもね」
 完全にこの仇名になった、ヨッシーとか言われていた時代が懐かしい。何か大リーグ選手になった気分だ。
「家族サービスするのよね」
「家事は僕がしてたけれどね」
「お料理は作ってくれたのよね」
「うん、いる時はね」
「じゃあいいお父さんじゃないの?」
「そうなるかな」
 そう言われると微妙な顔になった、いつも。
「あんな親父でも」
「だって放ったらかしじゃないでしょ」
「それはなかったよ」
 何だかんだで家にも帰って来た、いつも。
「女の人何人も侍らして家に帰ってきてたけれど」
「何人もなの」
「そう、何人もね」
 それこそだった、いつも。
「それで自分の部屋でパーティーしてたけれどね」
 それも毎晩だ。
「けれど女の人が僕をからかおうとしたら絶対に止めてたし」
「いじめとかも許さなかったのね」
「それもなかったね」
 絶対にだった、このことも。
「一度もね」
「じゃあやっぱりいい親父さんよ」
「そう言っていいのかな」
「確かに問題の多い人だけれど」
 この娘から見てもだ、親父のこのことは否定しなかった。むしろ肯定してそのうえで僕に対して話した。
「それでもね」
「いい親父っていうんだね」
「暴力振るわないことは大きいわ」
「それと借金もだね」
「その二つだけで高ポイントよ」
「しかも放ったらかしにしないしな」
「女の人にちょっかいも出させないしな」
 男友達もこう話した。
「それって結構な」
「いいよな」
「まあ大家が女の人と遊びたかったのならな」
「残念かもだけれどな」
「笑って言われたよ、二人で飲んでる時に」
 親父と飲むこともあった、一緒に住んでいた時は。何処からか買って来たトカイとかいうワインやレミーやナポレオンを親父が飲ませてくれた。
「よかったら二人で三人でも貸すってね」
「おい、女の人をかよ」
「そう言ったのかよ親父さん」
「何度も言われたよ、俺は他人の奥さんや彼女には手を出さないけれど」
 これが親父のポリシーだ、あと幼女にも手を出さない。
「女の人がいいって言ったら僕にも貸すって」
「親父さんの女の人達をかよ」
「御前にって言ってたのかよ」
「そうだよ」
 僕は驚くクラスメイト達に答えた。
「いつもね」
「で、御前やっぱり」
「その人達と」
「いや、そんなことはしなかったから」
 僕は眉を顰めさせて皆の震える様な問いに返した。
「そうしたことはね」
「しなかったのかよ」
「女の人と遊びなかったのかよ」
「そういうことは好きじゃないから」
 親父と同じことはしたくなかった、この気持ちは今も変わらない。
「だからね」
「おいおい、勿体無いな」
「折角親父さんが女の人提供してくれたのにか」
「据え膳食わなかったのかよ」
「何でだよ」
「だから好きじゃないから」
 それで、とだ。僕はまた皆に答えた。
「そうした女遊びはね」
「じゃあまさか」
「大家君って」
「女嫌い?」
「それで」
「いや、そっちの趣味もないから」
 僕は同性愛のことを考えて引きながらもそれでいて何故か笑顔にもなっている女の子達に対して答えた。 
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