| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十三話 バリ島からの女の人その十

「普通だよ、僕は」
「けれど女の人をあてがわれても」
「それでもよね」
「だから、僕は普通に交際したいんだ」
 親父みたいにハーレムとか何股どころか何十股じゃなくてだ。
「一人の人とね」
「何だよ、純愛かよ」
「一人の人を一途にっていうのね」
「また恋愛小説みたいなこと言うな」
「そっちみたいよね」
「うん、こう言うと何かあれだけれど」
 こう前置きしてまた言った僕だった。
「武者小路実篤から三角関係を抜いた」
「つまり完全な純愛かよ」
「そういうのが趣味なのね」
「駄目かな」
「青くね?」
「そうよね」
 僕の言葉を聞いてだ、皆いぶかしんで言った。
「幾ら何でもな」
「完全な純愛ってね」
「武者小路実篤から三角関係抜いたら」
「ちょっとやそっとの甘さじゃないわよ」
 皆武者小路実篤が好きらしい、話していてこのこともわかった。僕も好きでこれまでも何作も読んできている。
「それってな」
「相当過ぎるんじゃ」
「そうなるかな」
「なるよ、武者小路実篤だと」
「実際にね」
 こう言う皆だった、そして。
 僕が皆と一緒に話をしていると携帯が鳴った、かけてきたのは畑中さんだ。一体何かなと思いながら電話に出るとだった。
 畑中さんは僕にだ、こう言って来た。
「急になのですが」
「急にっていうとやっぱり」
「はい、新しい入居者の方が来られまして」
「また急ですね」
「何でもあちらの飛行機の都合で」
「飛行機っていいますと」
 飛行機と聞いてだ、僕は畑中さんに問うた。
「外国からの方でしょうか」
「バリ島からの方です」
「インドネシアですね」
 バリ島と聞いてだ、僕はすぐにわかった。
「あの国からですか」
「来られまして今しがた入居されました」
「本当に急ですね」
「そうですね、それでなのですが」
「その入居者の方は今どちらに」
「そちらに向かっておられます」
 畑中さんは冷静な口調でこう僕に言ってくれた。
「学園の方に」
「そうなんですか」
「はい、オートバイで」
「えっ、バイクですか」
「左様です、既に日本で乗れる免許も持っておられるとのことで」
「何かあらゆることが急ですね」
「今回の方は、ですね」
 畑中さんもそう思っている感じだった、言葉に感情は見られないけれど僕はそう感じた。とはいってもそれを普通に受け止めている感じだったけれど。
「確かにそうですね」
「そうですよね、とにかくですね」
「はい、今から登校されますので」
「わかりました、じゃあこっちでお会いします」
「その様に」
 畑中さんがこう言ったところでだ、何と。
 僕達のクラスにだ、いきなりだった。
 褐色の肌のやや小柄で大きな黒い目にピンク色の薄い唇の黒髪を腰まで伸ばして束ねている女の子が入って来た、白と黒、それに赤の八条学園の制服の一つを着ている。短いスカートからやはり褐色の脚が見えている。靴下は白だった。
 その娘が僕のところに来てだ、そのやや丸めの顔を笑顔にさせて言って来た。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧