八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第十三話 バリ島からの女の人その八
「家は普通だったよ」
「それでか」
「親父さんの存在が大きかったのね、前は」
「まあその親父もね」
一族の中でとかく評判の悪いあの親父もだ、今では。
「イタリアに転勤になったし」
「それ厄介払いじゃね?」
「そうかもね」
男友達の一人に言われてその可能性を否定しなかった、というかどうにも否定出来ないことだった。あの親父だけに。
「実際に」
「あまりにも女癖と浪費癖が酷くてだよな」
「お寺とかに入れてもね」
「尼さんに手出すよな」
「ごく普通にね」
そうなるというのだ。
「実際尼さんと交際したことあるし」
「既にやってるのかよ」
「うん、そうなんだよ」
「じゃあやっぱり御前の親父さんって」
「イタリアだから遊ぶだろうけれど」
その転勤というか今話していて本当に厄介払いにされた先の国が国だけにだ。
「それでも日本、うちのグループの本拠地で遊び回られて評判を落とされるよりはね」
「外国の方がいいってなるか」
「あっちでも既に遊び回ってるらしいけれどね」
その噂はもう聞いている、残念ながら。
「それでもね」
「日本にいないだけましか」
「あの人の場合は」
「うん、大人しくして欲しいけれどね」
僕の本音だ、偽らざる。
「どうしようもない人だからね」
「親父さんに言う言葉じゃねえな、それは」
「今の言葉はね」
「それでもああした親父さんだからか」
「言うのね」
「一緒にいた時からこうだよ」
本人に面と向かってだ。
「親父に言ってるよ」
「何か結構親しいんだな」
「仲は悪くないのね」
「確かに色々言ってるけれど」
「それでも」
「確かにうちの親父は糞親父だよ」
糞親父の中の糞親父だ、このことは否定しないし誰にだっていつも言っている。最悪の親父である。けれどだ。
人間の屑かというと、これは。
「借金しないし暴力嫌いだし嘘は言わないし卑怯でもないし」
「最低限は弁えている」
「そういう人なのね」
「うん、破天荒っていうか無頼っていうか」
そうした親父なのは確かだ、無頼派なんてもう殆どいないと思うけれど。
「ギャンブルもしないし」
「ああ、ギャンブルな」
「そっちはしないのね」
「うん、ギャンブルは破滅の基ってね」
この言葉も出した僕だった。
「親父も言ってたよ」
「博打で蔵立てた奴いないってな」
「そう言うからね」
「遊ぶのは女の人と」
これが桁外れでだ。
「飲んでね、食べてで」
「女遊びと酒か」
「そっち派だったのね、お父さん」
「うん、あと料理作ることが好きで」
そっちも趣味だ、親父の。
「僕にもよく作ってくれたよ」
「トータルで見たらいいお父さんじゃないの?」
女の子の一人が僕にこう言って来た。
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