八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第十三話 バリ島からの女の人その一
第十三話 バリ島からの女の人
ラブポーンさんは朝からテンションが高かった、六時の目覚めのピアノを弾いている早百合先輩にこんなことを言っているのを見た。
「明るい曲演奏してくれる?」
「明るい曲といいますと」
「日本のポップスとかね」
そうした曲をだというのだ。
「どんな曲でもいいからね」
「演奏して欲しいというのですね」
「とにかく明るい曲ね」
にこにことしてだ、先輩に言っていた。
「頼めるかな」
「わかりました、それではですね」
「今から弾いてくれるの?」
「AKBの曲で宜しいでしょうか?」
「あっ、早百合さんAKB好きなんだ」
「アイドルでしたら」
それも同性の、と返す先輩だった。
「あのグループの曲が好きです」
「そうなんだ、だったらね」
「AKBの曲で宜しいですね」
「私あのグループの曲大好きなの」
ラブポーンさんはこの時もにこにことしていた、そのうえで先輩に対して話していた。
「だから何でもいいからお願い」
「それでは」
先輩はラブポーンさんのリクエストに応えてその時弾いていた曲を弾き終えてからAKBの曲の中でも一番明るい曲を演奏した、それを聴いて。
ラブポーンさんはその場で少し踊りながら口ずさみさえした、その言葉はタイ語だったので何を言っているのかわからなかった。
けれど演奏の後でだ、ラブポーンさんは先輩に合掌して頭を下げてからこう言った。
「有り難う、弾いてくれて」
「よかったですか」
「うん、最高だったよ」
合掌の後で先輩の両手を自分の両手で握っての言葉だ。
「本当によかったよ」
「それは何よりです」
「先輩ってピアノ上手だね」
「上手かどうかわかりませんが」
先輩はいつもの調子でラブポーンさんに返した。
「好きで毎日弾いています」
「毎日なの?」
「ピアノ部に所属しています」
「ふうん、そうなんだ」
「子供の頃から弾いています」
「凄いね、私には出来ないわ」
ラブポーンさんは先輩の手を握ったまま言う。
「ピアノなんてね」
「いえ、ピアノは日々していれば」
「誰でも出来るの?」
「はい」
いつもの先輩らしく返していた。
「何でもそうだと思います」
「そういえば私も」
ラブポーンhさんはその垂れ目の中の瞳を動かさせながらこう言った。
「お料理とムエタイは毎日しているせいか」
「その技術にですね」
「自信あるかな」
こう言うのだった。
「あと歌もね」
「さっき踊っておられましたね」
「口ずさみながらね」
「それを見ますと」
「私歌も自信あるよ」
「リズムに乗っておられました」
そういえばラブポーンさんの踊りはわりかし上手だった、軽く口じさんでいたその歌もよかった。下手でないことは間違いなかった。
「ですから」
「いつもやってるとなんだね」
「はい、まずは好きであることです」
それ自体がというのだ。
「大事です」
「好きこそものの上手なれね」
「その通りです」
先輩は穏やかな笑顔らラブポーンさんに話していた。
「ですからこれからも」
「うん、ムエタイにお料理に歌をね」
「頑張って下さい」
「そうするね、それにしても早百合さんって」
その先輩にもだ、ラブポーンさんは言った。
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