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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第十二話 気さくなタイ人その十五

「前の家はもっと遠かったですけれど普通に歩いて行き来していましたし」
「いえいえ、そういう訳にはいかないのです」
「それはどうしてですか?」
「美和様はこの八条荘の管理人です」
「だからですか」
「はい、管理人としてです」
「管理人ってそんなに偉いんですか」
 アパートの管理人だ、その辺りに幾らでもいる職業だ。それで僕はとても偉いとも思えず畑中さんに言葉を返した。
「別に、と思いますけれど」
「ここでは違います」
「八条荘では」
「はい、違うのです」
 この八条荘限定ルールらしい。
「管理人様、そして入居者の方々はです」
「車で、ですか」
「送らせて頂くことになっています」
 学校にというのだ。
「そうなっています」
「だからですか」
「はい、歩かれる必要はありません」
「その車で、ですか」
「マイクロバスで」
 僕も送ってくれるといのだ。
「遠慮なく」
「そこまで仰るのなら」
「はい、どうぞ」
 この話も終わった、何はともあれ今度はラブポーンさんも迎えて八条荘はさらに賑やかになった、ただ僕はこうも思った。
 それでその思ったことをだ、また書斎で畑中さんに言った。
「このまま入居してくれる人が」
「どういったものになると」
「いえ、満室になってですね」
「それ以上来られるのではというのですね」
「そうなりませんか?」
「大丈夫です、もう入居される方は締め切りました」
「あっ、そうなんですか」
 僕は畑中さんのその返事に目を瞬かせて返した。
「満室になったんですか」
「そうです、お一人につき一室で」
「確か八条荘の一階は二十四室ですから」
「二十四人の方がです」
 もう決まったというのだ。
「ラブポーン様で十一人目ですから」
「あと十三人ですか」
「その方々が来られます」
「これからはですね」
「ですから満室になっていますので」
「入居願いやそうしたトラブルはですね」
「ありません」
 それは決して、というのだ。
「ですからご安心下さい」
「わかりました、実際にそのお話を聞いて安心しました」
「それは何よりです」
「成程、二十四人の方がですね」
「八条荘に入られます」 
 一人一室だからだ、それでだ。
「それだけの方が」
「そのこともわかりました、ただ」
「ただとは」
「いえ、うちのアパートって本当に広いですね」
 その部屋数を聞いての言葉だ。
「二十四部屋ですか」
「入居者の方が」
「しかもお風呂もおトイレもあって」
 しかもそのお風呂が凄い、広いだけじゃなくてサウナまである。男風呂しか知らないが女風呂も同じだと聞いている。
「お庭も見事で」
「何しろビクトリア時代のイギリス貴族の屋敷を再現していますので」
「広いんですね」
「左様です」
「お部屋はどうなんでしょうか」
 僕は入居している女の子の部屋の状況について尋ねた。
「どんな感じですか?」
「流石に美和様のお部屋程広くはないですが」
「それでもですか」
「人が寝起きして勉学に励めるには十分な広さです」
「じゃあ八畳位ですか」
「十二畳は普通にありますね」
「十二畳ですか」
 これはちょっと予想以上だった、そこまで広いとは思わなかった。
「ベッドもクローゼットもあって」
「クローゼットの場所は抜いてです」
「それで十二畳ですか」
「ベッドに机、それにテレビ等もあり」
 そしてというのだ。
「それぞれのお部屋におられます」
「いい環境ですね」
「それがこの八条荘です」
「そこに二十四人ですか」
「そうです、そして」
「そして?」
「美和様は八条家の方です」
 ここで急にだった、畑中さんはその言葉を真摯なものにさせてきた。そのうえで僕にこんなことを言った。
「このことをお忘れなきよう」
「?どういうことですか?」
「申し上げたまでのことです」
「そうですか、何かよくわからないですけれど」
 確かに僕も八条家の人間だ、一応その家訓は覚えている。人の道に反するな、卑怯卑劣であるなとかそうしたものを。
 そのうえでだ、僕は畑中さんに言葉を返した。
「わかりました」
「くれぐれも」
 このことは家訓をそのまま思い出して答えた、確か恋愛は自由恋愛でも一人の相手を忠実に愛せとおか。うちの親父は全く守っていなかったが。何はともあれそうしたことを話した後で僕はお風呂に入って歯を磨いて眠りに入った。そうしてこの日も終えた。


第十二話   完


                            2014・9・10 
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