八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第十二話 気さくなタイ人その十三
「あらためて宜しく、名前は」
「ラブポーン=トヨサキットさんだよね」
「大家さんよね」
「うん、僕の名前はね」
僕をはじめとして皆名乗った、それが終わってからだった。
トヨサキットさんは僕達にだ、こう言った。
「八条学園ってムエタイ部あるの?」
「うん、あるよ」
すぐにだ、僕はトヨサキットさんに答えた。
「キックボクシンブ部だけれどね」
「あるのね、じゃあ料理部は」
「あるよ、その部活も」
「よし、じゃあ両方入るね」
トヨサキットさんは笑顔で応えた、そしてだった。
僕達にだ、今度はこう言った。
「それじゃあね」
「それじゃあ?」
「それじゃあっていうと?」
「私の名前はラブポーンでいいから」
「トヨサキットさんじゃなくていいんだ」
「いいのよ、タイって元々は苗字なかったし」
どうもそうだったらしい、今知ったことだ。
「いいから」
「へえ、そうだったの」
詩織さんはトヨサキットさんのその言葉に目を瞬かせて返した。
「タイ人って」
「そうだったの、今は違うけれどね」
「それでその苗字じゃなくて」
「名前でいいから」
「ラブポーンでいいのね」
「全然いいから」
こう言うのだった、長身の上にある顔をにこにことさせて。
「それでね」
「それじゃあラブポーンちゃんでいい?」
詩織さんが最初にこの名前で呼んだ。
「リクエストに応えて」
「それじゃあね」
「うん、じゃあこれでね」
「とにかくこれから宜しくね」
また言ったラブポーンさんだった、僕もこれからこう呼ぶことにした。
「色々とね」
「そうだね、けれどね」
「けれど?」
「うん、何か料理好きな娘が多いねってね」
八条荘に来る娘達はだ、ラブポーンさんにしても他の娘達にしても。
「そう思ったんだ」
「そうなのね」
「うん、何はともあれね」
「いやあ、来日一日目よ」
「それダエ達も対して変わらないわよ」
「あれっ、そうなの」
「だって。来て一週間も経ってないのよ」
僕が大家になって二週間も経っていない、時間が経つのが速いのかそれとも長いのか。わからなくなってきている。
「だからね」
「大して変わらないっていうのね、私と」
「そんなものよ」
「じゃあ新入りっていっても」
「同期でしょ」
軍隊的な言葉まで出て来て。
「同期の蓮よ」
「桜じゃないの?」
「ベトナムの国花は蓮なのよ」
詩織さんにこう返すのだった。
「だから同期の蓮なのよ」
「そうなるのね」
「まあとにかく一緒だから」
数日入った時間が違うだけだというのだ。
「そこはどうでもいいわよ、ましてやね」
「ましてや?」
「あんたダエと同じ一年じゃない」
ラブポーンさんにそのまま返した言葉だ。
「だったら余計によ。気兼ねなくよ」
「お付き合いしていこうっていうのね」
「それでいいじゃない、日本語でも話せるし」
「私日本語一杯勉強したからね」
このことは笑顔で言うラブポーンさんだった。
「喋れるし書けるよ」
「それは何よりね」
「というか皆日本語上手だね」
「まあワタシも勉強したシ」
「私もある」
ジューンさんと水蓮さんもラブポーンさんに答える。
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