八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第十二話 気さくなタイ人その十二
「これタイのお菓子なんだ」
「ええ、そうよ」
「ふうん、そうなんだ」
「それにね」
「それに?」
「かなり上手ね」
「そういえば美味しいね」
このことはさっきから食べていてよくわかった、たしかに美味しい。甘さはかなりのものだけれどそれでいて食べやすい。
「これって」
「これ小野さんが作ったのかしら」
「いえ、違います」
ここで小野さんが出て来て答えてくれた。
「このお料理を作られた方は」
「と、なるとね」
それならと言うダエさんだった、察した顔で。
「新しい娘ね」
「左様です」
畑中さんが出て来て答えてくれた。
「実は先程新しい方が来られまして」
「どの方ですか?」
僕が畑中さんに尋ねた。
「一体」
「こちらの方です」
畑中さんが右手で指し示したきたところにだった、褐色の肌に垂れ目だけれどはっきりとしていささか彫りのある顔立ちの背の高い女の人がいた。
背は一七〇位ある、癖のある黒髪をショートにしている、にこにことした笑顔でいて実に可愛らしい口元だ。スタイルはすらりとした感じだ。
赤と黄色の上着と白のズボンが似合っている、その人を見てだった。
ダエさんはすぐにだった、その人に言った。
「あんたが新入りさんね」
「そうよ、ラブポーン=トヨサキットっていうのよ」
気さくな感じでだ、女の子の方から名乗って来た。
「タイのバンコクから来たわよ」
「タイね、やっぱりね」
「そういうあんたはベトナム人ね」
「ええ、そうよ」
その通りだとだ、ダエさんはトヨサキットさんに返した。
「八条学園に留学しに来てるのよ」
「それは私も同じね、ただね」
「今日は日曜だからね」
「そう、明日からね」
トヨサキットさんはダエさんに初対面とは思えない位に打ち解けて話していた。
「通学するから」
「そうなのね、じゃあお部屋は?」
「もう一一一室にね」
そこにというのだ。
「荷物とか全部入れたわよ」
「そうなの、早いわね」
「お手伝いしてくれるっていうかやってくれた人がいたから」
「ああ、あの人達ね」
「こっちの執事さんも手伝ってくれたわ」
「いえ、私は何も」
畑中さんは謙虚にトヨサキットさんに返した。
「しておりません」
「こう言って謙遜するのよね、さっきから」
「だってこの人日本人よ」
そこに根拠を見出して言うダエさんだった。
「それならね」
「ああ、日本人って自分の手柄誇らないからね」
「だからよ、とにかくあんたもなのね」
「そう、このアパートに入ったから」
この八条荘にというのだ。
「宜しくね、クラスは一年C組よ」
「ああ、ダエ達と同じ学年ね」
ダエさんは僕の話を聞いて言った。
「それだったら」
「ああ、そうなの」
「宜しくね、これから」
「こちらこそね」
二人で気さくに笑顔で話す、そして。
トヨサキットさんはあらためて僕達にだ、合掌をしてそのうえで頭をぺこりと下げてからにこりと笑ってこう言った。
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