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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第十二話 気さくなタイ人その十

「本当に」
「そうですよね、巨人に祟って欲しいです」
「巨人に衝いてくれて。親会社もそうなったら」
「言うに越したことないですね」
「全くだよ、まあ八回は何とかな」
「はい、凌げましたし」
「後は九回か」
 美沙さんはしみじみとして言った。
「九回さえ守ったら」
「阪神の勝ちですね」
「抑えてくれよ」
 美沙さんのコントの言葉はこれまで以上に切実なものだった。
「そうしたら勝ちだからな」
「本当にそう願いますね」
「全くだよ」
 こうした話をだ、美沙さんと千歳さんも話した。正直僕達は八回表に逆転されずに済んでほっとしていてその裏のことは忘れていた。
 それでだ、僕もこう言った。
「裏はもうね」
「どうでもいいのね」
「早く終わってね」
 そうしてとだ、詩織さんにも言った。
「九回も抑えてくれれば」
「いいわね」
「全くだよ、頼むよ」
 僕はグラウンドを観つつ切実な言葉を出した。
「九回、この回で終わりだから」
「一点差って嫌よね」
 美沙さんも苦い、困った顔で言う。
「逆転される可能性が高いから」
「一番ね」
「せめて三点あったら」
 詩織さんはここでこうしたことを言った。
「だったらね」
「勝てるけれどね」
「けれどうちの打線はね」
「最近は違うけれどね」
「そうした時にこそ打ってくれないから」
 それでというのだ。
「だからね」
「この裏は期待しない方がいいわね」
「僕もそう思うよ」
 こう話してだった、そのうえで。
 僕達は八回裏はそれこそ三者凡退であっさりと終わると思っていた、九回でどうなるかだけをだった。僕達は考えていた。
 だが、急にだった。
 ヒットでランナーが出て次のバッターがだ、まさかの。
 ホームランを打った、打球がスタンドに入るのを観てだった、円香さんは呆然となって僕達に対して言った。
「何も見えませんでしたわ」
「予想外だったんだ」
「はい」
 その通りだとだ、美沙さんは僕の言葉に答えた。
「全く以て」
「そうだったんだ」
「ですが」
 それでもというのだ。
「入りましたわ」
「うん、見事にね」
「これは大きいですわ」
「三点ね」
 さっきあと二点あればと言った詩織さんの言葉だ、声が呆然戸なっている。
「これだとね」
「ほぼ確実だね」
「今度こそそう思っていいわよね」
「うん、多分ね」
 僕は詩織さんにこう返した。
「そう思うよ」
「それじゃあ」
「これは大きいよ」
 試合を決めるアーチと言ってよかった、まさに駄目押しの。
「九割九分だけれどね」
「勝てる雰囲気になったわね」
「あくまで九割九分だけれどね」
 九十九パーセントと言った、僕は。 
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