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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第十一話 生粋のトラキチその十一

「これは危ういですわ」
「強くなくてもいい」
 留美さんは口を正真正銘のへの字にして言った。
「むしろいなくていい」
「全くですね」
「わたくしもそう思いますわ」
 早百合先輩は曇ったお顔で、円香さんも忌々しげな表情で留美さんに応える。
「何故阪神にはそうしたものが憑いているのか」
「甲子園は恐ろしいところですわ」
「甲子園には魔物がいるというけれど」
 詩織さんも眉を顰めさせて困った顔で言うのだった。
「本当だったのね」
「カーネル=サンダースってケンタッキーのおじさんよね」
 ダエさんはそのもう一人の悪霊について問うた。
「確か」
「そうよ、まさにその人よ」
「何でその人が阪神に祟るのよ」
「あっ、それ不思議ネ」
「どうしてあるか?」
 外国から来た娘達がダエさんに続く。
「ケンタッキーフライドチキンのお店にいなくて」
「ここにいるあるか」
「そこのところがワタシにはわからないネ」
「私も訳がわからないある」
 こう首を傾げさせる二人だった、その二人にだ。
 留美さんが深刻な顔でだ、こう言った。
「実は八十五年阪神が日本一になった時にだ」
「その時に一体何があったのよ」
「うむ、皆道頓堀難波の川に飛び込んで喜びを表現していたがだ」
「それ自体も訳のわからない風習だネ」
「阪神が勝って川に飛び込むあるか」
「そうか?これは素晴らしいならわしだ」 
 阪神ファンとして力説する留美さんだった。そこに誇りさえ見せて。
「そのならわしをしていたのだが」
「そこで何をやらかしたのよ」
「その日本一は偉大なる助っ人ランディ=バース様がもたらしてくれた」
 様付けだった。
「あの日本一の時にだ」
「その日本一の喜びのあまりだったのね」
「そうだった、皆が堀に飛び込む中でだ」
 留美さんの話は続いた。
「バース様に似ているという理由でだ」
「ケンタッキーのおじさんによからぬことをしたのね」
「堀に放り込んだのだ、一緒に飛び込もうということになってな」
「それでその結果だったのね」
「その怨霊が憑いたのだ」
「この甲子園に」
「そのおじさんは浮かんで来なかった」
 その時道頓堀の中を探したがそれでもだったのだ。
「そして気付いた時にはな」
「呪いを受けていたのね」
「翌年阪神は三位だった」
 留美さんは苦い顔でそのシーズンのことも話していった。
「掛布さんがデッドボールを受け。バース様は再び三冠王になられたが」
「何チームあるうちで三位だったノ?」
「それが大事あるが」
「六チームのうちでだ」
「じゃあいいんじゃないノ?」
「そうあるな」
 ジューンさんと水蓮さんは留美さんの説明を聞いてまずはこう思ったしそれを言葉にも出した、だがだった。
 留美さんはさらに言った、まさに本当の地獄はここからだった。
「しかし翌年最下位になりだ、後は長きに渡って暗黒時代となった」
「暗黒ねエ」
「最下位を独占したあるな」
「何年も連続でそうなった」
 まさに暗黒時代だった、星野監督誕生までは。
「思い出したくもない」
「その時の阪神はです」
 早百合先輩も話す。 
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