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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第十一話 生粋のトラキチその十二

「五位になれば嬉しかった位です」
「本当に凄い暗黒時代だったんだネ」
「それはまた凄いあるな」
「その暗黒時代を。私達は生きてきたのです」
「それが、なのネ」
「カーネルさんを道頓堀に入れてからだったあるか」
「そうです、悪夢でした」
 まさにとだ、留美さんも言うのだった。
「正真正銘の」
「その時のことは私もよく知っている」
 また言う留美さんだった。
「暗黒時代の阪神の頃は生きていないがな」
「それでもなのね」
「伝え聞いている、それで知っているのだ」
「大体事情はわかったわ」
 ここまで聞いてだ、ダエさんも頷いた。
 そしてだ、こう留美さんに返した。
「一部のファンの馬鹿な行いが恐ろしい呪いを引き起こしたのね」
「そうなる」
「ううん、それでその呪いがなの」
「今も続いているのだ、だから阪神はだ」
「ここぞという時になのね」
「敗れるのだ、最近は違うがな」
 日本一になれた、それで流石にここぞという時に絶対に負けるという呪いはなくなっていると思ってよかった。
 しかしだ、留美さんはそれでもこう言った。
「だが安心は出来ない」
「円香も見たっていうしね」
「それはおそらく真実だ」
 留美さんはその目を鋭くさせてダエさんに答えた。
「カーネル=サンダースは引き揚げられたがまだ呪いは残っているのだ」
「というか本当に強い呪いね」
「魔物に加えてな」
「そういえばあれよね」
 ここでだ、ダエさんは八回表の攻防を観ながらこんなことも言った。
「阪神って急に打たれそうな感じがするわね」
「このことですけれど」
 眉を曇らせてだ、円香さんがダエさんに話した。
「実際に不吉なものが見えます」
「何?不吉なものって」
「黒い気ですわ」
 聴いただけで不吉なものがわかる返答だった。
「それがマウンドに見えますわ」
「えっ、それって」 
 円香さんのその言葉を聞いてだ、僕は思わず円香さんに問い返した。
「かなりまずいんじゃ」
「はい、相当に」
「怪我とか起きないよね」
「そうしたものを表すものではないですが」
 そうしたオーラではないが、というのだ。
「しかしこれは」
「阪神にとってはだね」
「かなり不吉ですわ」
 そのことは間違いないというのだ。
「ですから」
「打たれるかな」
「我がチームの中継ぎ抑えは充実しているのだが」
 留美さんの表情も心配と不安に満ちている、伊達に阪神ファンではないということだろうか。わかっている言葉だった。
「しかし打たれる時は打たれる」
「万全じゃないから」
 詩織さんもかなり不安そうだ。
「そうなるからね」
「うむ、黒いオーラか」
「これはよくないわね」
 留美さんも詩織さんも言う。
「それを跳ね飛ばしてくれればいいが」
「それが難しいのよね」
「それが阪神だからな」
「ずっとそうだからね」
 二人で困った顔をして話す、そして。 
 早百合先輩がだ、覚悟を決めている声で言った。その言葉を出している顔も緊張して強張っているものだった。
「覚悟を決めて」
「覚悟をですね」
「私達はそうするしかありません」 
 韓戦している僕達は、というのだ。
「例え何があってもです」
「受け入れてですね」
「観ましょう」
 これが早百合先輩の言葉だった。
「是非」
「はい、それじゃあ」
 僕は先輩の言葉に頷いた、そしてだった。 
 試合を観ることにした、ここで。
 ヒットが出た、それがはじまりだった。


第十一話   完


                        2014・9・1 
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