八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十一話 生粋のトラキチその十
けれど今の様にだ、大事な試合は。そろそろ相手の広島が間近に迫ってきている。正直ここで負けるとかなりまずい。
そしてだ、その負けるとまずい試合こそがなのだ。
「しかし今はだ」
「どうなるかわからない」
「そうですわね」
「じゃあこの試合は」
「四点ありましても」
「安心してはならない」
それこそ決して、というのだ。
「このチームの場合はな」
「しかし。本当に阪神は」
僕は留美さんと話してからだ、阪神の攻撃が終わったのを見届けてから言った。七回裏のスコアボードにはちゃんと四点ある。
しかしだ、その四点がだ。
「普通勝てる状況だけれど」
「阪神だからな」
「見えますわ」
ここでだ、円香さんが眉を曇らせて不吉な色の言葉を出して来た。
「恐ろしいものが」
「それってまさか」
「まさかと思いますが」
詩織さんと早百合先輩が円香さんのその言葉に暗い顔になって言う。
「カーネル=サンダース?」
「あの方の」
「それにです」
あの伝説の怨霊がいるという、しかもだった。
それに加えてだと円香さんは言う、その怨霊はというと。
「魔物までもがいます」
「ちょっと、円香さんが見えることも気になるけれど」
「今のお言葉は」
「サンダースさんに魔物もって」
「その二つが重なると」
「「まずいですわね」
実際にそうだと言う円香さんだった。
「この二つが一塁側ペンチを見ています」
「フラグね」
「そうですね」
「これはこの試合阪神は」
「若しかすると」
「負けるかな」
僕もこの言葉を出した、出さざるを得なかった。
「これは」
「というかこの球場凄いネ」
「人間以外もいるあるか」
ジューンさんと水蓮さんはこのことに戦慄めいたものを覚えていた、そのうえでの言葉だった。
「そんな球場もあるなんテ」
「ちょっとないあるよ」
「甲子園って怖いどころヨ」
「鬼の集まる場所あるか」
「鬼?」
千歳さんは水蓮さんのその言葉に目を瞬かせて問い返した。
「今鬼って仰いましたけれど」
「ああ、鬼は幽霊のことあるよ」
水蓮さんは千歳さんにすぐに答えた。
「中国ではそう呼ぶあるよ」
「そうだったんですか」
「そうある、点鬼簿っていう作品があるあるな」
「確か芥川の?」
僕が水蓮さんに尋ねた。
「あの人の作品だったかな」
「そうある、私は中国語訳を中国で読んだあるが」
「それが点鬼簿で」
「作品の題名も中国語に訳したと思ったあるが」
「ああ、違うんだよね」
「そうだったある、そのままだったある」
芥川が日本語で書いたその題名のままだったというのだ。
「それで少し驚いたことがある」
「そうですか、中国では幽霊を鬼と呼ぶんですね」
千歳さんはあらためて納得して言う。
「じゃあこの甲子園球場は」
「恐ろしい鬼が二人もいるあるな」
「魔物だけじゃなくて」
「そういうことになるある」
「どちらもかなり強力ですわよ」
また円香さんが言って来た。
ページ上へ戻る