ひねくれヒーロー
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目を閉じよ
目を閉じよ。そしたらお前は見えるだろう。
-サムエル・バトラー-
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目を閉じよ
泣き腫らした眼で帰ってシュロやイカリに問いただされたくなくて、夜中にタヅナ氏の家に戻った
気配で気づいていたらしく、先生が玄関の前で立っていた
「・・・何があったか、聞いてほしいか?」
「嫌だよ
・・・遅くなってすみません」
手を差し伸べられる
握りしめて家に入り、遅い食事をとった
病人組と看護人ということでオレとカカシと先生は同じ部屋
オレが寝付くまで手を握ったままでいてくれた
「・・・先生、大切ってなんなんだろう」
「さぁなぁ・・・でも、こういう風に誰かと話が出来るのって、大切だと思うけどな」
「・・・任務って、どうなってますか」
「明日決行だ
仕込みは終え時がたつのを待つだけだ
・・・あとはお前の覚悟次第だな」
覚悟
大切なもの
オレが生きてることに繋がるナニカ
オレを思ってくれている人って、誰だろう
先生の心臓の音がやけにはっきり聞こえて、眠りに着いた
朝が来た
きっとこれから先、忘れることのできない朝だ
「それでは第六班の任務の確認だ
目標はガトーカンパニー社長、ガトーの暗殺
暗殺はコン、ガトーの護衛の足どめ、かく乱はシュロが担当
イカリ、暗殺成功時に飛ばす伝書鳩の用意は良いな?よし、
なお、この任務が失敗したときの退路の確保及び後始末は私が担当する
・・・だからといって失敗は許されない」
気合を入れろ
そう言われて姿勢を正す
念のためにと毒を塗ったクナイを用意し、小刀も懐に収める
「・・・今頃カカシ班は霧のなか再不斬と戦っている事だろう
これまで我々と言うイレギュラーがいながら原作通り進んできた
シュロの記憶から導き出した地点にコンを潜ませる
コンはガトーが来るまでその場から何があっても動かぬよう」
「はい!」
「ではその場所まで私が運ぶ
シュロ、イカリ、お前たちはそれぞれの役目が果たせるよう動きなさい」
「了解」「役目が果たせるなら、原作介入もOKってことっすね?」
「やりたきゃやれ
その代り、任務に支障が出るようなら今後許可しない」
「まぁそりゃそうだ」
覚悟
・・・覚悟か、オレにそんなの出来るかな、やってみなくちゃわかんないかな
先生がオレを抱き上げ、瞬身の術で移動する
そしてガトーが来るであろう橋の下に下ろされた
「コン、ここからはお前一人だ
・・・出来るな?」
大きく首を縦に振った
出来るさ
先生が消えた
カカシ班の援護にでも行ったか、それか別の場所でオレを見ているのか
カカシの血継限界の説明が聞こえてくる
あの野郎・・・白の想いが聞こえてくる
ずっと息をひそめ、人を殺すためだけに隠れるオレの耳に深く入り込んでくる
「お前らみたいな平和ボケした里で本物の忍びは育たない・・・
忍びの戦いにおいて最も重要な”殺しの経験”を積むことができないからだ・・・」
・・・いや、ここにその経験を積まされそうなのが1人居りましてね?
再不斬の言葉に思わず心の中で突っ込んだ
まだか、まだガトーは来ないのか?
依頼主であるガトーを殺せば自動的に奴らの依頼は意味の無いものになる
とっとと終わらせるにはガトーを殺すのが一番早いってのに・・・
—殺してやる—
ナルトの声が聞こえた
九尾の、暴走だろうか
腹部が熱くてたまらない
共鳴現象?こちらの九尾のチャクラに反応しているのか?
パルコのチャクラが暴れそうになるのを抑えつける
鳥の鳴き声のような音が聞こえてくる、これが雷切か
霧が晴れてきた
・・・白は、死んだのだろうか、死んだんだろうな
あいつは一体何だったんだろうか
—カツン・・・カツン・・・—
誰かの足音、それに続く無数の人の気配・・・ガトーが来た!
シュロの蟲が一匹近寄ってくる、足どめ開始か
蟲の毒で護衛が1人、また1人と気配が消える
ガトーはそれに気づかない、蟲がまた現れ合図がでた
「派手にやられて、がっかりだよ再不斬・・・!」
ガトーカンパニー社長ガトー・・・ようやくおでましか
コン、お前が殺せないなら私が殺す
私が、お前を守ってやる!
そう心に誓い、毒を塗ったクナイを用意し、構える
着実に護衛はシュロが仕留めて、可哀想なことにガトーは気が付いていない
カカシや再不斬はもう、その異様な光景に気づいているというのに・・・!
「ガトー!?」
今さら驚いたふりをして取り繕ったか
何かが起きているのを理解しているらしいが、どうなることやら
シュロの合図はコンに伝わったがどのタイミングで殺るのか
ガトーはゲスそのものといった目で白の死体を不躾に眺め、それに向かって唾を吐きかけた
「なんだ、私の腕を折った子供、死んだのか
良い気味だ
さて・・・次に死ぬのは、君たち「てめーだよ」・・・がぁ!?」
高らかに宣言したガトーが小刀で貫かれる
・・・そうか、ちゃんと自分で殺すんだな
だけど暗殺なのに声なんかかけちゃいけないって、後で説教しないとダメだな
「・・・狐火」
吐きかけた唾を狐火で燃やした
コンなりに怒って、どうにかしたかったんだろうか
死亡を確認し、首と胴体を切り離したあとコンはこちらに・・・いや、白の元まで歩いて来た
この光景に、皆黙ったままだ
依頼主であるガトーが殺されたため、再不斬との戦いは終わり、傷を癒そうとしている
「・・・なぁ、お前、大切なものがあると強くなれるって、言ってただろ?
別になくても強くなれるよな?あれからずっと探してたんだ、大切なもの
・・・でもさ、思い浮かばないんだ」
泣きそうな顔でコンが白に声をかけた
もう、白は死んでいると止めようとした時、声があがった
「・・・あぁ・・・そう、ですね、なくても・・・強くは、なれますよ・・・」
「白!」
まだ生きている!思わずといった風に再不斬が白へ走り寄る
泣いている、あの鬼人が泣いている
2人して白の傍に座り込んで、手を握っていた
「まだオレは見つけられてないだけなのかな
それともオレにとって大切なのは自分の命なのかな」
「巫子様もいつか・・・命より、大切な人が見つかることでしょう
思い出すことでしょう・・・
・・・そのときは、想ってくれている人よりも・・・もっと強く、覚悟を決めてくだ・・・さいね・・・」
「そっか、白は神殿のこと知ってるんだ・・・
覚悟・・・するよ
お前みたいに、道具みたいって言われても、大切なもののために覚悟を決めるよ
いつか、絶対に」
「白・・・今までありがとう・・・悪かったなぁ」
「再不斬・・・さん・・・ボクは、いま、とても・・・嬉しいです・・・」
雪が降ってきた
それからもう二度と口を開かない白の体を覆うように、雪が降っていた
雪で、2人が泣いているのかどうかも分からなくなった
「・・・なぁ巫子、だったよな?・・・白の葬儀、頼めるか
俺にはよく分からない宗派なんだ・・・」
「・・・火葬になるけど、良いかい?」
「あぁ」
コンが白の体に何か持たせた
あれは—三日月型の紙?
「・・・信徒と出会うことなんて、二度とないと思ってたんだけどな」
略式で、ごめんなと声をかけ白の体を狐火で燃やしていく
肉の焼ける匂いが立ち込めるかと思いきや、何故だか匂いがない
あの紙、匂い消しが含まれていたのだろうか
遺骨をまとめ、月のような色合いの和紙で包む
それを再不斬に渡した
「・・・お供えとかは、気が向いたらやってくれ
墓も、作る作らないは自由だ」
「・・・スマンな・・・」
それから長い間、2人は黙って遺骨を眺めていた
声をかけることも出来ずに、ただ自分の役目を果たすことしかできない自分が、ひどく腹立たしかった
2週間後
後にナルト大橋と呼ばれることとなる橋の完成を祝い、ささやかながら宴会があった
主役はナルトたち第7班、オレたち6班はシュロとイカリのみの参加として場を離れた
暗殺なんて汚れ仕事をした奴が祝い事に参加するのは気が引けた
修行場近くの森に作った白の墓に行くと、先客がいた
再不斬だ
大刀首切り包丁を墓につき差し、旅装に大荷物を抱えている
「置いて行くのか?」
「・・・少し、離れてみるのも良いかと思ってな」
欲しけりゃ持っていけと言われた、いらねぇよ
「・・・依頼しても良いか?」
「高いぞ」
「・・・三忍の自来也を探して、この手紙を渡してほしい
報酬は・・・干柿鬼鮫の情報とかどうよ」
「お前、本当に下忍か?まぁいい、受けてやる」
どういう意味だ
手紙を受け取り懐に直した
「自来也にあったらパルコの器のコンに頼まれたと言えば良いよ
あぁ、鬼鮫は今暁にいるから」
「・・・仕事が終わってから言うものだぞ」
「そうだよな
暁についての情報は自来也がより詳しく調べてるから」
「そうか、なら詳しく聞いてみるか
・・・金は、いらねぇ
葬儀代の代わりみたいなもんだ、世話になったな」
「・・・こちらこそ、同期がお世話になりました」
「ふん・・・
お前、気配の消し方上手かったぞ・・・向いてるかもな」
何にだ
問いただす前に彼はもう行ってしまった
墓に手を合わせる
なんだかよく分からないことが多かったけれど、いろいろ考え方が変わった気がする
何故白が神殿時代のことを知っていたのか
白が言いたかったことは何なのか
いつか全部分かりますようにと、神に祈った
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波の国編・完
中忍試験編は数話挟んでから進みます
白が可愛いというのはよく聞きますが、再不斬が可愛いと思うのは私だけだろうか
ここ数年誰にも賛同されたことがないです
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