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ひねくれヒーロー

作者:無花果
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ある真実を教える


ある真実を教えることよりも、いつも真実を見出すにはどうしなければならないかを教えることが問題なのだ。
—J.J.ルソー—


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ある真実を教える






大木の前に横たわるナルトとサスケ

刻まれた線が2人が長い間修行していたことを物語っている


「あれ?コン、お前もう大丈夫なのか!?」


オレの姿を確認した途端飛んでくるナルト

サスケは一度振り返った後もう一度木登りを始めた


「あぁ、オレも修行に参加することになった
 クナイで線をつけるのか?」

「そうそう、ま、一度やった方が早いんじゃねーか?」


それもそうだな、頷いて足にチャクラを込める

一歩だけ踏み出すと、チャクラが強すぎたらしく、弾かれそうなる

少しだけ調整して片足だけで垂直に立つ

残った片足でチャクラのバランスを取りながらゆっくり歩き出す

自来也との修行では水面歩行を主にしていたせいか感覚が掴みづらい

木の幹をめり込ませて進んでいたが、徐々にめり込みが少なくなり、軽やかに歩けるようになった

そこで気を緩めすぎたのか、チャクラが少なくなりすぎ、木から落ちた


「・・・サスケまであともうちょいだな」

「・・・ッ!」


あともう二歩でちょうどサスケの位置まで行けたというのに・・・

気を取り直してもう一度歩き直す

すると今度はすぐにサスケを追い越し、天辺まですんなり行けた


「コン、すげぇ!」


ナルトの称賛の声がむず痒く、誇らしい

照れて頬を隠そうとすると噎せ返り吐血しながら木から落ちた


「おい、無事かねたみ」


受け身も取れずに落ちると思っていたのだが、サスケが受け止めてくれたらしい

なんと珍しいこともあるもんだ


「・・・すんなり天辺まで行きやがって・・・
 ・・・コツ、とかあるのか」


あれ、ナルトから聞き出すんじゃなかったのか

首を傾げてしまう


「シュロも・・・イカリもさっさと木登りを終わらせやがった
 六班はもともと木登り修行していたのか?」


アカデミー時代のライバルが簡単にこなしたのが悔しかったのか


「いや、シュロは家族から見てもらってたらしいし、イカリは霧にいた時に習得してたはずだ
 ・・・オレも木登りじゃないけど、水面歩行なら木の葉に来る前にやってた」


忍者の家系の子はよくあることみたいだしな


「水面・・・カカシや再不斬がしていたあれか」


木の葉だと木より水面歩行のほうが難しいって言われてるようだ


「オレは木より水のほうが流れが掴みやすくてやり易いな」


あくまでオレなりのやり方でいえば・・・だけど


「「流れ?」」


話にはいれず木登りを続けていたナルトが混ざる


「・・・ほら、チャクラって体をぐるぐる廻ってるもんだろ?いわば血みたいな
 水も元々流れているものだから、その流れに自分の流れを合わせる、って感じかな」


流れに逆らわず、一体化するといえば見栄はいいな

気配の消し方に通じる考え方だとエロ仙人に言われたものだ

約一年ほど前の話だというのに懐かしい

今も覗きしてんかと考えると無性に怒りが湧いてきた


「流れに合わせる・・・か」


こんな感覚的な話で納得したようで、早速木登りを始めるサスケ

先程より随分長く登っているようだ


「・・・木登り出来ても、長い間できないんだよなオレ・・・」


体力的な問題はこれからの鍛錬でどうにかするしかないな

タヅナ氏の家に戻り、食事の支度をしているツナミさんの手伝いを申し出る

他愛ない会話をしながら準備を整え、食卓を飾る

「コン君はいつも料理するの?」

「ナルトと同居してましてね、料理担当はオレなんです
 料理の腕ならイカリのほうが美味いですよ」

血霧時代の配給食が不味くて自炊しなきゃヤバイレベルだったらしいからな

「そうなんだ、一度食べさせてもらおうかしら」

「イカリよりシュロが喜びますね、あ、サスケも喜ぶかな」

「あらあら?もしかして三角関係・・・?」

実に楽しそうですなご婦人

一児の母でもこういう話は好きなんだな

ナルト達が帰ってきたので、全員そろっての夕食

オレは自分でおかゆ作ってあります

「・・・体悪いの?」

イナリに話しかけられる
多分、こいつオレのこと同年代だと思ってるんじゃなかろうか

「生まれつきだ
 医者からは30まで生きれるかどうかって言われてるがな」

「・・・怖くないの?」

怖い、か

パルコより怖いものなんてなかったからな

「怖いって言うよりも時間が足りないのが惜しいな
 やりたいこともやれない、だから今出来ることをしなきゃ
 あと10年ぐらいしかないしな」

皆が固まった

どうやらオレの年齢を計算し始めたらしい

「・・・ん?」

イナリが首をかしげている

「・・・・・・・これでもオレもうすぐ19歳なんだよ」

「うそだ!!」


・・・うそじゃないよ本当だよ?
 

「ま、こんな体だから安定するまで学校とか行けなかったし
 忍者の修行とか全然だったからな
 年下と混ざって勉強するのも楽しいもんだよ」

だから同期一同、そんな有り得ないものを見る目でオレを見るな

シュロもイカリもなんで教えてないんだよってハンドサインを送ってこないでくれ

先生ズもじろじろ見ない

視線に耐えきれなくなって体調が優れないと言って寝間に入る

・・・鏡を見て、自分を見る

大体、6歳ぐらいからかな・・・成長しなくなったの・・・

布団にもぐりこんで目をつむると、いつのまにか深い眠りに落ちていた













朝起きると、先生たちしかいなかった

シュロとイカリは先生の指示で波の国を走り回っているらしい

ナルト達は修行、サクラはタヅナ氏の護衛だそうだ

先生の指示は仕込みを待て、とのことなのでナルトの元へ行くことにした

ナルトは夜から修行に出て帰ってきていないらしい

修行場である森へ行くと、ナルト以外に1人の・・・美、少年?がいた

これで男なんだぜ、うそだといってよバーニィ・・・


「あ、コン!」

「おはようございます」「あ、どうも」


あまりの美少女っぷりに見惚れてしまう、危ない危ない


「貴方も、忍者なんですか?」

「あぁ、ナルトとは同期なんだ」

「?・・・すいません、貴方はナルト君より、年上、ですよね?」


・・・まさか、一目で見抜かれた?いや、当たってるから嬉しいんだけれども・・・


「体が弱くてな、入学が遅れてこうなんだよ」

「そうだったんですか・・・
 今ですね、ナルト君に大切な人がいるかお聞きしていたんです」


貴方にもいますかと問われた

・・・あぁ、あの大切な人云々・・・ナルトの心に刻み込まれたあの会話か

ナルトには悪いけれど・・・オレは、共感できない

前世の時は素直に感心したものだけれど、今のオレには無理だ


「生まれてこのかた、大切なものなんかなかった・・・いや大切なものなんていらない
 そんなものに縛られた生き方をしたくない
 これからもそんな存在は、必要ない」


大切、そう聞いて思い浮かぶものが何一つなかった

助けてくれた自来也の顔も、同じ転生者であるシュロやイカリ、先生の顔さえも何一つ想い浮かばなかった


「人は・・・大切な何かを守りたいと思ったときに、本当に強くなれるものなんです」

「うん・・・」


ナルトが白に共感して、オレの顔色を伺いながら頷いた

いや、お前はそれで良いんだよ、ただオレはそういうのはいらないだけだから


「本当は貴方は知っているんじゃないですか、自分を大切にしてくれた人を」


自来也の大切は木の葉、シュロやイカリはお互いが大切、先生は知らない

誰もオレを大切だと言う人はいなかった


「そんな奴いない」


首を横に振ったオレに、白は語りを止めなかった


「いいえ・・・いたはずです
 いたからこそ、貴方は生きている
 そして本当は求めているはずです、何よりも大切なものを「知った風な口きくんじゃねぇ!」・・・」


感情が乱れて狐火が纏わりつく

ナルト、逃げておけ、うっかり燃やしちまうかもしれないし、共鳴してお前のチャクラまで暴走しかねない

何故オレが生きていることで大切な人がいると思うんだ

意味がわからない


「オレにとっちゃ全ての他人は比較及び妬みの対象!
 

 大切だとかそんなものは存在しない!


 才能ある奴が上から物を語るんじゃない!」


白の真っ直ぐな目が怖くなって、啖呵きって逃げ出した

足がもつれて転びそうになる

視界の端に狐火が燃え盛っているのが見える


「っあ!」


転倒したところを追いかけてきた白に助け起こされる


「こんなにも・・・こんなにも貴方を思っている人がいるんです・・・

 ・・・逃げないでください、
 
 大切な人の覚悟を無駄にしないでください」


なんなんだ!

お前はなんなんだ!なんでオレにそんなこと言うんだ!

ただのキャラクターのくせに、そういうことは主人公であるナルトに言っておけばいいだろう!?

なんでオレなんだよ、大切な人ってなんだよ、覚悟ってなんなんだよ!!


言うだけ言って立ち去った白の背中を見ながら、オレは泣き続けた

様子を見に来たナルトの手を振り払い、1人で泣き続けた

自分が吐いた血の海に座り込んで、子供のように泣き続けた















彼らから離れたというのに今もなお泣き声が聞こえてくる

耳に残るのは叫び声

彼はまだ、言葉の意味を分からないでしょう

それでも言っておかねばならなかった

大切な者の存在を、何故こちらへ逃れることが出来たのかを

匂わせなければならない、逃がしてくれたひとがどうなったのか


再不斬さんの元へ帰る歩みを止め、前方を睨んだ

まるで彼の炎のように、いや、あの炎の源たる九尾の狐パルコが現れた


——・・・あの仔の存在意義を、狂わせるな——


殺意が込められた怨念深い声

従わなければ殺される、そう思えるほどの声


「・・・だからといって・・・妬みや恨みだけで人は生きてはいけません
 貴方が見えなくしている周囲のことも、彼自身が背けている自分のことを知らなければなりません」


彼には覚悟が足りない


——これ以上、あの仔に余計なことを知らせようものなら・・・
  お前の大切な、再不斬の命はないと思え?——


吐き捨てるように呟いて消えて行った

その場に座り込んで体を抱きしめた


「全てが、狂っているんです

 始まりの貴方が知らなければ、正しくならないんです
 
 だから、思い出してください、大切なものを
 
 お願いです、巫子さま」


祈りは、届かない



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コンの性格:嫉妬深い、涙脆い←


 
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