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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第十話 剣道少女その四

 僕を見るなりだ、深々と頭を下げて言って来た。
「おはようございます」
「貴女がですね」
「はい、日笠留美といいます」
 頭をまた上げてだ、僕に言って来た。
「今宵より八条学園高等部、そしてこの八条荘に入居させて頂きます」
「わかりました、それで僕が」
「大家さんですね」
「八条義和といいます」
 僕も名乗った。
「宜しくお願いします」
「はい、不束者ですが宜しくお願いします」
「いや、不束者とは」
「僭越ですが私はです」
 こう僕に言って来るのだった。
「何も出来ませんが」
「いえ、そうしたことは」
「構わないと言って頂けるのでしょうか」
「別に。何も言うつもりはないですが」
「有り難き幸せ、それでは」
「それではとは」
「今より入居させて頂きます」
 また僕に頭を下げて言ってくれた。
「そして共に」
「あの、それでですが」
 僕は日笠さんに対して問うた。
「日笠さんは高校生ですよね」
「そうです」
 実にはっきりとした返事だった。
「二年生です」
「じゃあ一緒の学年だね、それじゃあ」
「それではとは」
「そんな堅苦しくなくてもいいから」
 同級生だからだとだ、僕は日笠さんに告げた。
「砕けていかない?」
「しかし大家さんですから」
 それで、と返す日笠さんだった。
「失礼なことは」
「いいよ、そんなことは」
 失礼じゃないと本人に言った。
「一緒の学年だからね」
「左様でありますか」
「うん、別にね」
「では普通の喋り方で、ですね」
「誰に対してもそうじゃないよね」
「はい、別に」
 そういうことはないというのだ。この辺りは小夜子さんや早百合先輩とは違う様だ。
「そういうことは」
「じゃあいつもの口調で」
「・・・・・・わかった」
 急に男の子みたいな喋り方になった。
「では大家さんと呼んでいいか」
「あっ、呼び方はそれでね」
 構わないとだ、僕も答えた。
「いいよ」
「そうか、ならそう呼ばせてもらう」
 やっぱりはっきりとした口調だった。
「大家さんと、そしてだが」
「そして?」
「私のことは留美と呼んでもらいたい」
 硬い口調での言葉だった。
「名前でな」
「下の名前でだね」
「うむ、そう言われた方が落ち着くからな」
 はきはきとしているけれど何処か恥ずかしげな口調に思えた。
「それで頼む」
「じゃあ留美さんでいいかな」
「う、うむ」
 何か戸惑いを感じさせる口調だった。
「それで頼む」
「それではあらためて宜しく頼む」
「そういうことでね」
「では今から部屋に入らせてもらうが」
「既にお荷物等はお部屋に入れてあります」
 畑中さんが留美さんにこのことを言った。
「ですからご安心を」
「そうですか、有り難うございます」
 明らかにかなり年上の畑中さんには敬語のままだった、この辺りの礼儀をわきまえているところが剣道をしているだけはあると思った。
「それでは」
「お部屋は一〇九号室ですので」
「そして、ですね」
「はい、朝と夕方にはお食事が出まして」
「お昼はお弁当ですね」
「そのことは先日お話させて頂いた通りです」
 そのまま、というのだ。 
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