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この世で一つだけのメリー=クリスマス

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第二章


第二章

「さよなら。またね」
「うん。それでクリスマスはさ」
「もうこっちでお店予約取っておいたわよ」
 未来が言ってきた。
「そんなことだろうと思ったから」
「早いね」
「全く。そういうところは全然なんだから」
 また呆れた顔になって光男に言うのだった。
「プレゼントは忘れないでよ。いいわね」
「わかってるよ。今頭の中に入れたから」
 光男は笑って答える。
「じゃあクリスマスにね」
「ええ、またね」
 こうしてこの場は別れた。光男は未来が帰った後でその今年最後の仕事を終わらせた。それをファックスで雑誌の編集部に送った後でコタツに戻り蜜柑を食べながら思うのだった。今さっき未来が自分の為に剥いてくれた蜜柑をである。
「さて、何にしようかな」
 それが問題であった。
「プレゼントといっても」
 一口に色々とある。だからこそ悩んでいるのだ。
 まず考えたのは何かを買う。だがこれも何かと思うのだった。
 普通にマフラーやセーターもオーソドックスだ。それでもいいが今回は少し趣向を変えてみたいと思ったのだ。それが彼の今の考えであった。
 それで彼は思った。何か変わったものにしようと。
 しかしそれでも問題があった。変わったものといっても実に様々だ。何でもいいというわけではない。ましてやクリスマスだ。贈り物自体がかなり限られてもいた。だからこそ彼は悩んでいたのだ。一体何を贈るべきか。結論が出ないのだった。
 暫くあれこれと考えたが結論が出ない。結論が出ずに考えが煮詰まってきた。こうなると余計に考えが出なくなるのが彼の性分であった。
 それでどうしようもなくなって遂に一旦休みに入った。買っていた缶のカクテルを出して飲みだしたのであった。
「さてと」
 何本か飲んでいると次第に落ち着きだした。そうして酔った頭でまた考えに入るのだった。酒のせいかかなりリラックスして考えることができるようになっていた。
「何にしようかな」
 また同じことを考えるのだった。
「お金はあるけれど。それでも」
 何にするかは考えがつかない。どうしてもだ。
 それでまた飲んだ。飲めば飲む程酒が回る。そうしてふと部屋の周りが目に入った。そこで彼が見たものとは。
「あれっ」
 壁に資料の一つとしてかけてあったポスターだ。冬のサンタの格好のキャラクターポスターである。雑誌編集部からの貰いものである。
「サンタか」
 それを見てふと思うのだった。それで悩んでいるから余計に目に入るのだった。
 ふと思っただけだったがそれが考えに至るのはすぐだった。考えてみると何もお金をかける必要はない、そうも考えだしてきていた。
「お金がなくてもできるな」
 そのうえで彼は仕事道具を取り出した。それもカラー用のである。これには理由があった。
「ええと、確か」
 誰かを思い出しながら下書きをしていく。かなりアルコールが入ってしまっているがそれでも下書きは上手く進む。そうして次の日も合わせて何かを書き終えたのだった。それを書き終えた彼は満足した顔でコタツに座っていた。
「これでよし。かな」
 そう呟いた。そこにあるのを見て。
「後は。クリスマスになるだけだな」
 カレンダーを見る。最近滅多に見なかったしそもそも存在していることさえ忘れていたが今回は充分覚えていたのだった。というよりは未来に言われてやっと思い出したのだった。
 そのカレンダーを見て満足した笑みを浮かべる。そうしてクリスマスに備えて身支度を整える。彼も後はクリスマスを待つだけであったのだ。
 
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