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流星のロックマン STARDUST BEGINS

作者:Arcadia
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憎悪との対峙
  35 星の幻影

 
前書き
今回は比較的?早い更新となります。
前回、型破りな脱出を披露したスターダストですが、これまでどれだけの損害を出したのでしょうか?w
そして今回はどれくらいの被害を出すのか?w
地味にそんなことを想像しながら、読んだり、書いたりするのも面白かったりします(笑) 

 
「全く...ダメだな、オレ」
『いえ、シドウではなく私のせいです。システムはまだまだプロトタイプです...あなたの実力はこんなものではありません...』

シドウはゆっくりと立ち上がり、呼吸を荒くして呟くと再び膝をついた。
アシッドシステムは完成しているとは言えない。
そもそも電波体という生物の持つ特有の力を人工的に再現しようという前例の無い計画である以上、手探りでの研究が進められ、場合によってバージョンアップによっては改悪される可能性もあり、そんな見えない出口を探し続けて行き当たりばったりの状態でここまで辿り着いたのだ。
むしろここまでの奮闘を見せたシドウの方が常識から逸脱しているとしか言えない。
シドウは呼吸を整えつつ、生徒たちの方を見た。
体育倉庫の裏から倒れているシドウを心配そうに覗いている。
そんな時、ようやく救いの手が差し伸べられた。

「暁さん!!」

WAXAの援軍がグラウンドに突入してきた。
今回の計画上、校舎に突入した者より待機していたWAXA隊員が多かったのが幸いした。
警察のように校舎に突入して倒された者、裏切り者などで多く占められた突入部隊より優位に立てる。

「速く救急車を…生徒たちが病院に…」
「暁さんもですよ!!」
「オレはいい…この通りピンピンしてる」

シドウは再びゆっくりと立ち上がって見せた。
だがその様子を見ていた隊員たち、そして生徒たちは皆、目を背けたくなった。
直視するには辛過ぎた。
だがそんなシドウに挑戦するように、ジャミンカーの数人が立ち上がった。

「!?」
「構え!!」

WAXAチームは銃を構え、戦闘隊形に入る。
数は8人、ラバー弾で気絶させて確保して情報を吐かせる。
そのつもりでチーム全員が狙いを定めて引き金を引く。
だがジャミンカーたちはそれを嘲笑うかのように全弾交わすと、再び校舎の方へと走り去った。

「追え!!!」

いくら手負いとはいえ、人間を凌駕する戦闘能力を持っている以上、走っても追いつけない。
それに日も殆ど落ち、校庭は真っ暗で狙いも定まりづらい。
あっという間に差をつけられ、ジャミンカーの姿は校舎の中へと消えた。
野球部が雨天時に使う室内練習場、ネットで覆われた校舎下の空間だ。

「何をするつもりだ…」

シドウは毅然と立ち上がったものの、やはり追いかける力は残っていないのか、動けぬまま敵の行動を予測していた。
自分たちから逃げるのであれば、校舎内に入るよりもっといい方法があるはずだ。
普通に追いかけっこでは圧勝である以上、車で追跡できない細い道を走って逃げる、それが一番合理的だ。
いくらスターダストの圧倒的戦力を見せつけられたからといっても、敵もプロだ。
正気を失っているとは思えない。
だとすれば何かしらの考えがあると警戒するに越したことはない。

「…まさか!?まずい…離れろ!!」

「え?」

逃げるだけが目的ではない、もう一つの目的、スターダストの追跡。
そのための手段、目には目を歯には歯を、この場で一番理に適っている。
そしてスターダストが使ったからこそ度肝を抜かれたものの、ValkyrieというPMCならやりかねない手段。
それに辿り着いた時、シドウは声を張り上げていた。
しかしその予想は悲しいことに的中した。

「!危ない」

爆音が響いたのと同時にネットを突き破って何かが飛び出した。
KTM・390 DUKE、KTM・390 RCが3台ずつ、そしてKTM・1190 ADVENTURE、Valkyrieが脱出用に用意していたものだった。
ジャミンカーたちは持ち前の運動神経で手足のようにバイクを操り、蛇行して撹乱し、ウイリーやジャックナイフでWAXA隊員たちを蹴散らすと、校舎外に飛び出した。

「追え!!追え!!」

ダメージを受けた隊員たちを支えながら、急いで駐車場のパトカーと白バイに飛び乗って追跡を始める。
だが全員ではなく、シドウは追跡に半分の人間を回し、残りの半分は残した。
こちらが手薄になっては電波妨害の中では救急車を呼ぶのには時間がかかる。
その間の生徒たちへの対処、そして裏切り者のいた警察に介入される前に主導権を握っておかなければならない。
それを考慮すれば、的確な判断だった。
シドウはゆっくりと生徒たちの方へ歩いて行く。

「全員無事か?」

「はい!でも…スズカちゃんが…」

「スズカ!!」

その時、グラウンドの奥の部室が建ち並んでいる方から1人の少女がよろめきながら歩いて来た。

「ミソラちゃん!?」
「どうして…」

響ミソラだ。
しかしミソラは偶然、遅刻したおかげで人質にはならずに済んでいたはずだった。
それにも関わらず自分たち以上にフラフラになって現れたクラスメイトに皆が驚きを隠せなかった。

「スズカ!大丈夫!?」
「うん…大丈夫。ちょっと掠っただけ」
「でもさっきまですごい出血で…」

スズカの腕にはリボンが包帯の代わりに結ばれ、止血が施されていた。

「ロックマンが…助けてくれたの…」

「え?ロックマン…」

「そうなんだよ!ロックマンが銃を持った連中、みんな倒して僕たちを助けてくれたんだよ!!」

ミソラは自分の遭遇したスターダストだと確信した。
見た目はシューティングスター・ロックマンに近いシルエットを持ちながらも、灰色を基調としたボディ、そしてかなりの重武装、ヘルメットの形状も鷹と狼のような形状をした謎の電波人間。
圧倒的な戦力、まるで押し潰されそうな雰囲気を纏い、奇襲をかけたのに一瞬で倒されてしまった。
敵だと思っていた。
だがスズカとみんなと助けた、そして自分も。

「カッコ良かったよな!!」
「そうそう!!教室からスズカちゃん抱えて飛び出した時とか!」

「…」

生徒たちが安堵に包まれ、自分たちを地獄から救い出したヒーローのことを語り合う。
そんな中、ミソラはポケットからカードを取り出し、この状況を理解しようとしていた。
持っていたカードはリカバリー300、地下で目を覚ました時、手に握らされていたものだ。
このカードによって回復し、なんとか地上へと戻って来ることができた。
自分のものでないとすると、持ち主はロックマン、すなわちスターダストしかいない。
自分を倒しておきながら、助けたのだ。

「どういうこと…?ロックマン…私を助けた?」
『どうやら私たちはこの子たちを助けようとするロックマンの邪魔をしただけみたいね』
「でも私に回復カードを残して行くなんて…邪魔なら助ける必要はなかったはず…」

「ミソラ?」
「あっ…なんでもない」

「…B班、C班は地下のサーバールームに向かえ。今なら警察に邪魔されないはずだ。A班、D班は残党がいないかの捜索、そして妨害電波発生装置を見つけ次第、破壊だ」

ミソラはスターダストの姿を思い出してはその行動の謎に頭がパンクしそうだった。
そして徐々に自分の知るロックマンと重ねてはその共通点と違いに頭を振る。
そんな様子をシドウは見つつ、部下に指示を出す。
しかしその様子と遠目にイライラを隠せない者が1人だけいた。


















「もうすぐ到着っすよ」

笹塚の運転する車はもうすぐ現場に到着するところだった。
日が落ちているせいか現場の近くというだけで不思議な緊張感に包まれている。
リサとマヤはそれぞれのPCの画面に集中している。

「ダメだな。完全に電波が妨害されてる、ふざけやがって」
「Wi-FiはおろかBluetooth、トランシーバー、高速データ通信、PHS、旧式のGSMや3Gまで全部ダメとは…自分たちの連絡手段まで断つ、確かに徹底された妨害工作ね」

全く使えない通信にリサはある意味、感心し、マヤは逆に苛立っていた。
しかし笹塚は前から何かやってくるのを遠目に発見した。

「何だあれ?」
「どうした、女たらし?」

「いや…あれ…うわっ!?」

遠目に見えていたそれは一瞬、目を逸らしたうちに急接近しており、あっという間にすれ違った。

「「キャァ!!」」

猛スピードで通り過ぎたそれはスターダストの運転するスター・イリュージョンだった。
3人はその姿を見ることはなかったが、それにより起こった風圧でハンドルを取られ、スリップしそうになり急停車した。

「あっぶねぇ…何だったんだ!今の!?」

「うわっ、姉ちゃん!!」
「!?…これは…電磁パルス?」

2人のPCの狂い出し、おかしな音を立て、急に電源が落ちた。
マヤは慌ててMacbook Proの電源ボタンを連打した。
しかし電源が一瞬だけ入ったものの、すぐさまエラーメッセージだけが高精細に表示され、ダウンした。

「おいおい!!ふざけんなよ!!?」
「え?え?どうしたんすか!?」
「うっさい!!ヌケサク!!」
「ちょ…」
「落ち着いて、マヤちゃん!」

「笹塚!!今のやつを追え!!きっちり耳そろえて弁償させてやる!!」

「落ち着きない!!マヤ!!」

リサは声を荒らげて、PCが壊れて取り乱すマヤを叱った。
リサのHP・Touchsmart Sleekbookも同じ状態だったが、左腕に装着していたトランサーは正常に動作した。
トランサーは自身が膨大な電波を使用するため、他の電波の影響や電磁パルスに強く作られており、正常に動作するのを確認すると深呼吸した。

「何があったんすか?」
「EMPの影響を受けたようです。そのせいでPCが壊れたんですよ。車は大丈夫ですか?」
「えっと…ちょっと調子悪いですけど、ちゃんとエンジンはかかるんで大丈夫そうっす。でも無線機は妨害電波の影響云々じゃなくて受信どころか電源自体入らないっす。ついでにヘッドライトもパトライトも。やられましたね」
「EMPって…街灯まで消えてんぞ!?最悪だな」

冷静に状況を判断しようとする。
しかし次の瞬間、追撃が来た。

「!?うっ?」

今度は先程よりもスピードが遅かったため、その正体が見えた。

「ジャミンカーだ!ジャミンカーがバイク乗ってやがる!!」
「くっそ。逃げられたってことか?」
「いえ…むしろ追いかけてる?」

リサは見えなくなっていく追跡者たちの背中に向かって目を細めた。

















「くっ…」

スターダストは高速道路に入り、更にスピードを上げると、風を切る感覚を通り越して、吹き飛ばされそうな感覚にカウルにしがみつく。
速度は既に300㎞/hに迫りそうだ。
今日、初めてバイクの運転というものを覚え、ただ教え込まれた実践している。
応用は効かないし、もし集中力が切れてしまうことがあれば、間違いなくメリーとともに跡形も無く吹っ飛ぶのは目に見えていた。
アクセルを握る手に力が入る。

「大丈夫か…?もう少しだ、頑張れ…」
「はぁ…うぅ…コワシテ...やる...」

ダークチップの影響で徐々にメリーの苦しみながら呟くうわ言も凶暴性を帯び始めている。
スターダストはもう一度、腹部のベルトを確認した。
メリーが吹き飛ばないように自分の体とベルトで括りつけているのだ。
無理やり密着させている状態だが、それ以前にメリーはぐったりとスターダストの背中に身を預けていた。
一刻の猶予も無い。
時間を確認する余裕も無く、海の上の高速道路から僅かに見える水平線に沈む太陽と真っ暗な周辺から時間の経過を感じ、焦りを覚える。
自分の通ってきた道はEMPで街灯がダウンしていき、正面から見れば暗闇を引き連れて迫って来るように見える。

「…」

スターダストはEMPによって交通を混乱させ、追跡を撹乱するつもりだった。
そしてそろそろいい頃だと判断し、左手でユーティリティーベルトのEMP発生装置のスイッチを切って再びハンドルを握ると前方を走るバスを抜き去る。
このスピードでは長い時間、片手を離すことが出来ない。
これは免許も持っておらず、覚えたての自分が運転しているからではない。
ひとえにマシンのスペックが高過ぎるのだ。
プロのレーサーでも無ければ扱うのは難しい、もしフルスペックを引き出そうとすれば彼らでも吹き飛ばされてしまうだろう。
そもそもが普通の人間が乗ることを前提としていないじゃじゃ馬なのだ。
まさに怪物と呼ぶにふさわしかった。
前方にはインターネットがダウンしてニホン全体がパニックを引き起こしているというのに、いつもに日課と言わんばかりに暴走運転をしている時代遅れの暴走族が進路を塞ぐように走っていた。

「ん?ありゃなんだ?」
「どうした、タク?」
「いや?バックミラー見てみろよ!」
「え…あぶねぇ!!」

高速で迫ってくるスター・イリュージョンに驚き、皆がほぼ同時にハンドルを切って道を開ける。
だがスターダストは抜くと、少しスピードを緩めた。

「何だ、こいつ!?」
「おい!てめぇ!!どこのグループの連中だ!?」

スターダストはこれ以上のスピードはメリーに負担を掛けると確信した。
いくらヘルメットのシールドを下ろしているからといっても呼吸に影響を与えかねない。
しかしここでスピードを一般車並みに落とすわけには行かない。
むしろもっと加速しなければ、手遅れになる。

『バトルカード…スーパーバリア!』

スターダストはバトルカードをロードし、自分とメリー、そしてスター・イリュージョンをバリアで覆った。
これによって今まで体中に突き刺さっていた空気の抵抗が一瞬で消え去る。

「あと少しだ…」

スターダストはクラッチを握って、シフトペダルを踏み上げ、ゆっくりとクラッチを繋ぐと更に加速する。
もうついてこれる者はいなかった。
少し後ろを走っていた暴走族も圧倒言う間に差をつけられ、気づけば視界から完全に消え去った。
その姿はスター・イリュージョンの名の通り、まるで地上を走る流れ星の幻影を見ているようだった。

















「……」

ハートレスはコンステレーションの時間を見ながら、落ち着けずにいた。
既に時間は17時40分に迫ろうとしていた。
計画では30分にはスターダストはここ、スカイタウンの入り口に当たるこの広場に現れているはずだった。
既に10分近く過ぎている。
当然、あの状況ではイレギュラーは間違いなく発生する。
時間通りに運んだ方が不気味といえば不気味だ。

「…チッ」

一応、通話用の回線電波を拾っているiPhone、そしてそこにそびえ立つ建造物のエレベーター前の時計も同じ時間を示していた。
自分の時計を疑っているわけではないが、やはり精度はクォーツに軍配が上がる。
自身のOMEGA・コンステレーション DAY・DATEは機械式の自動巻き時計なのだ。
もちろん歴史と実績を持つOMEGAが独自開発したコーアクシャルムーブメントは機械式時計の中でも高い精度を誇り、機械式の難点のであるオーバーホールも10年に一度程度で済むなど優れた性能を持っている。
しかし、このスマートウォッチなどのウェアラブル端末が普及した世の中では若者は皆、そっちに走る。
ウェアラブル端末など高くても5万ゼニー程度で普通の時計以上の高機能、対し普通の時計、もしくは何十万ゼニーもする高級時計はネクタイと同じように引き継がれてきた社会人の慣習のような扱いを受けていた。
安価で高機能、そして時代に合っているともなれば、新しいもの好きの若者がどちらを求めるのかは考えるまでもない。
クォーツならともかく機械式、自動巻きではなく手巻きとまでいってしまえばそれはただの金持ちの娯楽状態だ。

「こういう時に限って早まってるっていうことは無いのね」

ハートレスはため息をついた。
この時計を使ってもう10年近くになる。
オーバーホール時期というのもあるのか、最近、数分のズレが生じるようになっていた。
いい時計とは狂い出す時期まで正確なのかと驚かされた程だ。
しかし今ではズレていて欲しいと望んでいた。
アイリスから預かったチップを握りしめ、深く深呼吸をする。
すると、ようやく聞き覚えのある音が聞こえてきた。

「!?…やっと来たわね」

広場の前の料金所のETCで通過すると、僅か数秒でハートレスのガヤルドの隣にスター・イリュージョンは停車した。
ハートレスはすぐさま駆け寄る。
その様子を見ていた広場の数人の子どもたちはポカンと口を開けていた。

「容態は!?」
「最悪だ。予想通りダークチップで使われてる。もう限界だ」

スターダストは自分とメリーを繋いでいたベルトを外すと、メリーを抱えてイリュージョンを降り、そのままガヤルドの助手席に寝かせる。
そしてメリーのヘルメットを外した。

「うぅ…こわ…す…つぶす…」
「大丈夫。今助けるから…」

メリーは今までに見たことのないくらいに苦しそうな顔をして、普段からは想像のつかないくらいの荒々しい言葉を発している。
ハートレスはハンドガンタイプの照射装置にワクチンチップを装填し、小型のディスプレイに読込完了の表示が現れたのを確認すると、それをメリーの顔面に向けて照射した。

「うっ!?あぁ…やめ…」
「苦しいでしょうけど、我慢しなさい」

メリーを狂わせようとしていた悪の心が最後の抵抗を見せる。
手を施すのが遅れたため、通常よりメリーへの負担が大きかった。
だがギリギリのところで間に合った。

「ハァ…フゥ…わたし…一体?」
「大丈夫よ。もう大丈夫…悪い夢を見てただけ」

「!?…」

ハートレスは今までにスターダスト=彩斗に見せたことのない表情でメリーの手を握った。
その様子はずっと羨ましくて眺めていた公園で遊んでいる本物の親子のようだった。

「……」

スターダストは自然と反応が遅れ、2人の様子を数秒ながら眺めていた。
メリーは安堵感と疲労感から心底落ち着いたような穏やかな顔で気を失ってしまう。
だがそれによってスターダストもようやく安心した。
しかしそれでも緊張は緩めずにメリーに背負わせていたバッグをハートレスに渡す。

「ジョーカープログラムだ。電磁波を通さないこのバッグに入れていたからデータは無傷のはずだ」
「…大したものね。あの素っ頓狂な計画を成功させるなんて」
「だいぶ狂わされたがな」
「それに私がここに来なかったら?ワクチンなんて作ってなかったら?私が裏切るとは思わなかったの?」

ハートレスは正直に驚いていた。
正直、彩斗からすればメリーとジョーカープログラムを天秤にかければ当然、メリーに傾く。
最悪の場合、ジョーカープログラムは見捨ててやってくると思っていた。
お互い利用される関係ではあるが、どちらかといえば自分が仕切っているように見えるが、実際にその場にいって判断して行動を変化させられる彩斗の方に主導権がある。
間違いなく自分の提案には乗るとは確信していたが、完璧にこなしてしまった。
警備が厳重で無理だと判断すれば、ジョーカープログラムは諦め、メリーだけは命がけで救うという行動を取っていたかもしれない。

「メリーを救うまでは信用すると言ったはずだ」

「…あぁ…ずいぶんと細かいこと覚えてるのね」
「アンタもだよ。オレを信用したから作戦通りにワクチンを完成させてここにやってきたんだ」
「…ハァ…生意気。生徒たちは?」
「全員無事だ」
「狂わされたって、何があったの?」
「データには無かったが、WAXAに新任の指揮官がいた。そいつが無能な上、警察にValkyrieのスパイがいた」
「警察に?」
「警察とWAXAは水と油だ。おそらくWAXAへの対抗心に浸け込んで、ダークチップを…噂をすればか」
「え?」

ハートレスは振り返った。
見えるのは日が完全に落ちて全てを飲み込みそうな海、そしてそれにかかる高速道路だ。
特に変わった様子ではない。
しかしスターダストの視線は料金所の向こう、何かがこっちに向かって来ていた。
そしてそれは徐々にハートレスという普通の人間の視力でも見えるくらいに近づいていた。

「速くメリーを連れて行け!!」
「あなたは!?」

「あいつら全員、やってやる…!!」

スターダストはそう言うと、スター・イリュージョンに飛び乗った。
そしてキーを回し、セルスタートでエンジンを始動した。
ハートレスも助手席のシートベルトを締め、ドアを閉めると、自分も運転席に飛び乗ってエンジンを掛けた。
そしてスターダストと目を合わせ、お互い1回だけ頷くと、アクセルを踏み込んで反対側の高速の料金所へ走り去る。

「クラッチ、ペダルを踏み込んでローに、アクセルをゆっくり開いて回転数を上げ、ゆっくりクラッチを繋ぐ…」

スターダストはスタンドを上げると、ハートレスに教わったことを今、改めて口に出して1つ1つ実践する。
ただし前輪のブレーキを握っているというアレンジが加えられている。
当然、一般車を遥かに上回るエンジンの性能は高速で後輪を回転させる。
そして地面を削りながら、方向を180度方向を転換すると、一気にブレーキを離して、猛スピードで発進した。
広場にはタイヤと地面の境界から発生した白煙が立ち込めた状態からのロケットダッシュ。
あっという間に料金所を突破すると、再び高速道路へとと飛び込んだ。


 
 

 
後書き
今までの損害に今回はリサとマヤのPCまで追加になりましたw
バイクの運転を覚えたばかりの彩斗の運転は映像にしてみると、すごく危なっかしいことでしょう。
あくまで電波人間だからできる芸当ですw

ベース車の設定はHONDAのCBR1000RRですが、やっぱり実物はカッコいい!です!
この間、学校の近くで見たのですが、颯爽と走り去る姿はとてもスタイリッシュです!

最後のハートレスの時計は未来という設定からすると、古風なイメージです。
今でさえスマートウォッチが流行る?のかという状態なのに機械式ですからねw
今でも機械式も魅力的です!
ちゃんと手入れさえすれば、一生モノの相棒になるでしょうし、ロレックスやオメガなんかの高級時計ブランドは今でも機械式が主力です!
なにせ電池がいらない!
彩斗が使っている(設定の)シチズン・エコドライブもソーラー式ととてもエコロジーで便利です(僕も持ってます)w
そしてドラマで登場する時計なんかの小道具はそのキャラクターを表現するツールに便利です。

例:ロレックスをつけている太り気味のおじさん→お金持ちアピールしているイヤラシイキャラ、成金
  軽自動車に乗るお兄さん→歳相応の収入で経済的、こだわりがあまりないタイプ
  DIESELやFossilの時計や服を身につけている若者→流行に敏感、中身はチャラくて外見に重心を置くタイプ
など
もちろんセリフや行動で変化はしますが、ちょっとした方向を定義づけることもあります。
笹塚は言動だけで主に3つ目のタイプに入りますw
他にも色とか大きさとか。

今後もいろいろ登場しますが、今回から始まったバイクチェイス!
初心者丸出し&バイクはじゃじゃ馬のスターダストに勝ち目はあるのか?w

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