八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第九話 はじめて見たツンデレその一
第九話 はじめて見たツンデレ
二人でアパートの正門に向かいながらだった、畑中さんは僕に話して来た。
「今度の方もですか」
「外国からの方ですか」
「はい、そうです」
こう事前に僕に教えてくれた。
「東南アジアから来られた」
「東南アジアのどの国からでしょうか」
「ベトナムです」
「ああ、あの国からですか」
「ベトナムからの方も八条学園には多いですね」
「はい、確かに」
本当に世界中から留学生が来る学園だ、ジューンさんのアメリカや水蓮さんの中国だけじゃない。その東南アジアからもよく人が来る。
それでだ、僕もベトナムと聞いても全く驚かなかったのだ。
「ですから」
「特に、ですね」
「そうですかという感じですね」
これが僕の偽らざる今の心境だった。
「悪い人でないなら」
「構いませんね」
「このスタンスは変わらないですから」
「畏まりました、それでは」
「はい、じゃあそういうことで」
こうした話をしてだった、僕達は正門まで向かった。そして正門まで来てすぐにだった。
車が一台来た、そこから一人の少女が降り立った。編笠に白いア丈の長いワンピースを着ていてとても長い黒髪の女の子だった。
背は一五〇なかった、大きな黒目がちの瞳にだった。幼さの残る顔に小さな唇。身体つきもまだ幼い感じだ。
その娘がだ、僕達を見てこう言ってきた。
「あんた達がこのアパートの管理人さんね」
「左様です」
畑中さんが女の子に答えてくれた。
「私が副管理人と言っていい立場ね」
「こっちの背の高い人がなのね」
女の子は僕を左手で指差しながら畑中さんに尋ねた。
「正管理人なのね」
「そうですけれど」
「そうなのね、私今日からこのアパートに入るね」
こうだ、高いとても女の子的な声で言って来た。
「クギ=ミヤ=ダオよ」
「釘宮さん?」
何故かこの名前が思い出された。
「いい名前だね」
「違うわ、クギが苗字でね」
そして、とだ。女の子から言って来た。
「ミヤがミドルネーム、それでダオが名前よ」
「そうなるんですか」
「ちなみにダオっていうのは日本語で桃って意味だから」
「桃さんになるんだ」
「そう呼びたいなら呼んでいいわよ、ベトナムじゃダオって呼ばれてるけれど」
「ダオさんですね」
「そう呼んでもいいわよ、あと私一年生だから丁寧な日本語はいいから」
つまり敬語はというのだ。
「使いたいならそれでいいけれどね」
「じゃあ僕二年生だから」
「普通の呼び方でいいわよ」
「そうさせてもらうね」
「ええ、それで管理人さんよね」
「八条義和っていうんだ、八条学園高等部の二年生だよ」
「じゃあダオの先輩になるわね」
「そうなるね、確かに」
僕もダオさんのその言葉に頷いて答えた。
「一年上だから」
「そうよね、じゃあ管理人さんだから」
それで、とだ。ダオさんは自分のペースのまま話してくる。
「大家さんって呼んでいいわね」
「うん、その呼び名で他の人にも呼ばれてるから」
それで、と返した僕だった。
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