| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第八話 お団子頭の女の子その十三

「ですが」
「この人がいなかったからですね」
「はい、そうでした」
 そのせいで、というのだ。
「男性の方は来られませんでした」
「そうですか」
「男の人は自然とあちらに行かれました」
 その未亡人さんが管理人を務めるアパートに、というのだ。
「ですから八条荘はです」
「女の子だけになったんですね」
「それに建物の雰囲気自体も」
「ううん、そういえば」
 ここで僕jは夕闇の中のお庭を観て言った。
「女の子の方が好きそうですね」
「はい、イギリス風のお屋敷ですし」
「女の子ってこういうのが好きなんですか」
「アリスの様に」
 畑中さんはこの少女の名前も出した。
「まさに」
「ああ、不思議の国の」
「はい、鏡の国の」
 その両方の作品に出て来る、ルイス=キャロルはよくぞあそこまで魅力的な女の子を生み出せたものだと思う。
「あの少女のことを思い出すのでしょう」
「だからですか」
「イギリス風は女性の方の方が」
「好きなんですね」
「それにです」
「それに?」
「この八条荘のサービスもどうやら」
 それも、というのだ。
「女性向きの様なので」
「あっ、そうなんですか」
「私は意識していなかったのですが、実は」
「実はといいますと」
「サービスのアドバイスはお父上から頂きました」
「親父ですか」
「はい、実は」
 その女の子へのサービスをというのだ。
「教えて頂きました」
「そうですか、親父に」
「これまで申し上げていませんでしたが」
「いえ、親父は確かに女好きですけれど」
 このことはとにかく何度言っても言い切れないことだ、僕も今言っていてそのことを痛感している。
「けれど優しいことは優しいです」
「左様ですね」
「男に対してもですけれど」
「特に、ですね」
「はい、女の人には」
 このことは確かに言う僕だった。
「暴力も絶対に振るいませんし」
「それで私もあの方ならと思いまして」
「親父に教えてもらったんですか」
「女学生の方々へのサービスを」
 太宰治の女学生という作品を思い出した、畑中さんの今の言葉から。
「そうして仕事をさせて頂いています」
「そうだったんですね」
「左様です、それで今もです」
「イギリス風でいかれてるんですね」
「そうなのです」
 丁寧な物腰で僕に話してくれた。
「そうした次第なのです」
「わかりました、そのことは」
 僕は畑中さんに答えた。
「親父のことは別に」
「構いませんか」
「それで女の子達が満足してくれるのなら」 
 問題のあり過ぎる親父でもだ、それでもその畑中さんに教えたサービスが女の子達が満足してくれている結果になるのならだった。
 僕にしても異論はなかった、それで畑中さんに答えた。
「それでお願いします」
「畏まりました」
「あんな親父でも役に立つんですね」
 僕はまたしても親父に感心した、一緒に住んでいた時はそんなこと全くなかったけれど今はまたしてもだった。
「そうなんですね」
「そうなりますね」
「ですよね、あそこまで駄目人間なのに」
 その女癖と浪費癖から言う言葉だ、借金は作らないだけましだけれど。
「畑中さんのお役に立てて女の子達も満足しているのなら」
「止様を見直されましたか」
「そこまではいかないですけれどね」
 尊敬はしない、それも全く。
「そういうこともあるんだなって」
「思われますか」
「はい、そうです」
「ではまた入居者の方が来られますので」
「今からですか」
「左様です、それでは」
「はい、迎えに行きましょう」
 こう話してだった、僕達は二人で新しい入居者の娘を迎えに行った、正門の方に。


第八話   完


                         2014・8・13 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧