八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第七話 アメリカからの入居者その十六
「華があるからね」
「ヤンキースみたいに頭に来なイ?」
「ヤンキース嫌いなんだ」
「嫌いも嫌イ、大嫌いヨ」
本当に嫌いなことがわかる言葉だった。それが表情にも出ていた。
「あんなチームハ」
「そうなんだ」
「オーナーも嫌いだシ」
それに、というのだ。
「お金であそこまで選手を集めるとカ」
「ああ、じゃあ巨人は嫌いだね」
あの忌まわしい人類共通の敵であるチームだ、親父は巨人が勝つとその時点で不機嫌になる位嫌いだったけれど僕も同じだ。
「あのチームはいいよ」
「阪神だネ」
「やっぱりあそこだよ」
日本の野球チームならだ。
「あそこが一番いいだろうね」
「大家さん阪神好きなんだネ」
「うん、かなりね」
実際に好きだ、子供の頃から応援している。
「あっさり負けるチームだけれどね」
「あっさりとなんダ」
「そう、負ける時はね」
本当にあっさりと負けてくれるから凄い。
「そうなるけれどね」
「それでもなんだネ」
「好きだよ、それじゃあ今度ね」
「今度?」
「皆で甲子園に行こう」
八条荘の皆でだ、この場合は。
「阪神タイガースの本拠地にね」
「その球場が阪神の本拠地なのネ」
「そうなんだ、阪神タイガースの本拠地で」
僕はジューンさんに笑顔でこのことも話した。
「とてもいい球場なんだ」
「そんなにいい球場なノ?」
「言葉では言い表せないよ、雰囲気が違うんだ」
他の球場と比べてだ。
「特に巨人に勝った時はね」
「巨人?」
「日本のヤンキースだよ」
ニューヨークヤンキースのことは実はよく知らない、しかしこの世に巨人程悪辣なスポーツチームはないと確信している。
「まさにね」
「悪いチームネ」
「悪いも悪い、極悪非道だよ」
それこそヤクザ屋さんに匹敵する、権力と金を使ってやりたい放題して何が社会の木鐸とさえ思っている。
「多分ヤンキースのオーナー並にね」
「スタインブレナーの奴みたいナ」
ジューンさんはここで眉を顰めさせた、スタインブレナーの名前は僕も聞いている。そのヤンキースのオーナーだ。
「そんなところなの」
「調べたらわかるよ、とにかく最悪のチームだから」
戦後日本にも問題はある、その病理の集大成こそが巨人じゃないかとさえ思う。
「そのチームに阪神が勝った時はね」
「最高なんだネ」
「本当に最高だから、今度ね」
「八条荘の皆でだネ」
「行こう、最高のチームを観にね」
僕葉笑顔でジューンさんを誘った、そしてジューンさんも僕の言葉に笑顔で頷いてくれた。あの球場に皆と一緒に行くことを考えると僕はそれだけで楽しかった。
第七話 完
2014・8・5
ページ上へ戻る