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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第七話 アメリカからの入居者その十四

「誰でもいい子ならネ」
「友達になるんだ」
「ワタシは何も出来ないのヨ」
 ジューンさんはこうも言った。
「最初は何モ。それで何が偉いノ?」
「何も出来ない」
「そう、教えてもらって出来るのヨ」
 何でも、というのだ。
「だからネ」
「偉くないんだね、ジューンも」
「人種で偉いって決まるノ?」
 ジューンさんはまた僕に聞き返してきた。
「それデ」
「まさか」
 僕はすぐに返した。
「そんな筈ないよね」
「そう、そんなことで決まらないヨ」
 人間は、というのだ。
「決まる筈ないヨ」
「そうだよ、そんな筈ないヨ」
「何処でもいい人がいればネ」
「悪い人もいるからネ」
「ロスにもとんでもない奴いたヨ」
「白人でもだよね」
「ワタシも白人だけれド」
 それでも、というのだ。
「白人にもいい人がいテ」
「悪い人がいて」
「同じだヨ、そのことがワタシよくわかったノ」
 ロスで生まれ育って、というのだ。ジューンさんは故郷でそのことをかなり強く学んだらしい。言葉にもそれが出ていた。
「人種や宗教や仕事じゃないヨ」
「そういうことで人は決まらないね」
「大家さんもそう考えてるネ」
「うん、実際にね」
 うちの親父にしてもだ、日本人はあまり女性に積極的じゃないということはうちの親父を見れば全員がそうではないとわかる。
「そういうものだよ」
「そうよネ」
「そうだよ、この学校にいてもわかるよ」
「色々な人がいるかラ」
「色々な国から色々な立場の人が来るからね」
 中にはユダヤ教のラビの人もいる、その人はイスラエルから来ているけれど早く戦争が終わって欲しいと思っている。
「そうしたこともわかるよ」
「いい学校なんだネ」
「そうした意味でもね」
 そうだとだ、僕は答えた。
「僕もそう思うよ」
「そうなのネ、じゃあワタシモ」
「マーシャツアーツと陸上もして」
「楽しく過ごすヨ」
「そうしてね、ただ」
「ただ?」
「うちのアパートはね」
 八条荘のこれからのことも話した、この学園もそうだけれど。
「色々な国から来るみたいだから」
「アメリカだけじゃなくテ」
「畑中さんが言ってたんだ」
 実質的に畑中さんが切り盛りしてくれている人の言葉だ、これ以上頼りになる人の言葉だからこそ。
「色々な国から来るって」
「人ガ」
「そう、来るから」
 それでだというのだ。
「だからね」
「そのことも頭の中に入れておいてね」
「うん、わかったヨ」
 笑顔での言葉だった。
「そのこともネ」
「それでね」
「うん、それでだけれド」
「それで?」
「この学校のグラウンドって広いネ」
 今度言ったのはこのことだった。 
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