八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第七話 アメリカからの入居者その十
「けれど。悪い人でないのなら」
「それでは」
「はい、お願いします」
「人は人種や宗教、職業では決まらないのです」
ここでだ、畑中さんは僕に真理を話してくれた。
「それは心で決まります」
「心、ですか」
「はい、それで決まるのです」
「心が腐っていればですね」
「日本人でも誰であろうともです」
「駄目になりますね」
「私はそう思います」
こう僕に話してくれた、この世で最も大切な心理の一つを。
「心が人でなければです」
「人でなくなるのですね」
「そうです」
「そういう人いますね」
それこそどの国にもどんな職業にもだ。勿論宗教やそうしたことも関係なくだ、心が人間でなくなっている奴はいる。僕もその話を聞いている。
「創作作品でも」
「はい、そして現実でも」
「そうです、ですから」
「国籍にこだわらなかったんですね」
「入居される方も」
「そういえば親父も」
僕はここでまた親父のことを思い出して言った。
「人種差別とか職業差別はしないです」
「それも一切ですね」
「どんな国の人が急患で来ても」
「手術をされていますね」
「何も言わずに」
「そこが止様のいいところの一つなのです」
「そうですね、まあ遊ぶのもですけれど」
浮気の相手も国籍、宗教、職業問わない。節操がないと言えばそうかも知れない。
「医者として人を見殺しにすることはしないです」
「左様ですね」
「ですから僕も」
決して親父を見習ってではないけれど。
「そうした差別はしないです」
「それが人として正しい姿です」
「そうですね、それじゃあ」
「はい、ジューン様も他の方も」
「大家としてです」
「入居を認められますね」
「そうさせてもらいます」
畑中さんに対してはっきりと答えた。
「絶対に」
「そう仰ると思っていました」
これが畑中さんの返答だった。
「お流石です」
「いえ、僕はそんな」
「お話した通りです、それでは」
「これからもですね」
「はい、入居される方が来られますので」
その人達をというのだ。
「お迎え下さい」
「わかりました」
僕は畑中さんの言葉に笑顔で応えた、何はともあれ八条荘は国際色豊かになることは間違いなかった。それで。
翌朝だった、メニューはトーストにベーコンエッグ、それとボイルドベジタブルだった。そのメニューを見てだった。
ジューンさんは笑ってだ、こう言った。
「いいネ、ベーコンエッグ大好きだヨ」
「アメリカではベーコンエッグは」
「よく食べるヨ」
笑顔でだ、小夜子さんにも話した。
「ワタシ自分でも作るしネ」
「そういえばお料理も」
「うん、作るからネ」
「ではお好み焼きは」
「お好み焼き?」
「はい、日本のお料理の」
「ああ、あれだよネ」
お好み焼きと聞いてジューンさんは最初わからないという顔だった、けれどすぐにはっとした顔になってこう言った。
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