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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第七話 アメリカからの入居者その九

「長く走るのが好きなんダ」
「そうか、あたしはバスケだよ」
 美沙さんは自分がしているスポーツを言った。
「そっちだよ」
「わかったヨ、美沙さんだったネ」
「ああ、そう呼んでくれよ」
「わかった、じゃあ美沙」
 あらためてだ、美沙さんの名前を笑顔で呼んだ。
「これから宜しくネ」
「こっちこそね」
「大家さんも皆もネ」
 美沙さんに続いて僕達にも言うのだった。
「これから楽しくネ」
「はい、それでは」
「お願いします」
 詩織さん達も応えた、勿論僕も。僕達はジューンさんも迎え入れて入居者は六人になった。その後でだった。
 僕はお風呂に入ってだ、そうしてから。
 畑中さんと書斎で二人になった、それでまた話した。
「あの、ジューンさんはアメリカ人で」
「はい」
「外国の方が来られることも考えてみれば」
「有り得ますね」
「そうですよね、うちも学園は世界中から人が集まりますから」
「申し遅れましたが」
 ここでだ、畑中さんは自分から言って来た。僕達はソファーに向かい合ってそのうえでこの日も麦茶を飲みながら話した。
「入居者の半分が外国からの方です」
「そうだったんですか」
「はい、申し遅れてまことに」
「いや、いいです」
 畑中さんは謝罪しようとしてきたけれど僕はいいと返した。
「それは」
「そう言って頂けますか」
「そんな、謝ることじゃないです」
 だからいいとだ、僕は答えた。
「構いません、しかし」
「しかしですか」
「入居者の半分の方が外国からの方ですか」
「はい、サトー様だけではありません」
「他にもですね」
「中国からも志願者がありまして」
 お隣のあの国からもだというのだ。
「その他にも東南アジアや中南米、それにオセアニアと」
「多彩ですね」
「太平洋全域から来られています」
 入居者の人達がというのだ。
「その方々がこれからです」
「入って来てくれるんですね」
「そうです、お嫌でしょうか」
「人種的偏見はないつもりです」
 これが僕の返事だった。
「犯罪者でもない限り、若しそうであっても」
「更生された方ならですね」
「いいと思います」
 正直人種的偏見の強い人間には自分が差別されてみろと思う、歴史にある差別の話を読んでいって僕が思ったことだ。例えばジューンさんのいたロスでも起こった日系人排斥運動とかだ。それを助長したハーストとかいうマスコミも最低だと思う。
「僕は」
「それではですね」
「はい、僕は構いません」
 こう畑中さんに答えた。
「畑中さんにお任せします」
「わかりました」
「ただ、戸惑っただけです」
 これまで日本からの人が来るだけだと思っていたからだ、日本にいるからだ。しかし考えてみればうちの学園なら当然のことだ。
 それでだ、また言うのだった。 
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