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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第七話 アメリカからの入居者その六

「僕はそうした考えなんだ」
「そうですか」
「薄情かも知れないけれど」
 自分でもそう思う、けれどだった。
「会いたいし。元気でいてくれたらいいけれど」
「強くお会いしたいとはですか」
「出来そうにないからね」
 それでだった。
「お袋も忙しいだろうしお互いに事情があるから」
「だからですか」
「仕方ないと思ってるよ」
 会えない、このことはだ。
「それで諦めてるんだ」
「そうなんですね」
「うん、まあね」
 また言った僕だった。
「会えたら神様に感謝するよ」
「そうなればいいですね」
「本当にね、それにしてもうちの親父はね」
 また言ってしまった、親父のことを。
「イタリアにいるけれどね」
「あちらにですか」
「あれで料理上手だから」
「お父上はお料理がお好きですか」
「食べることも作ることもね」
 そのどちらもなのだ、うちの親父は。
「趣味なんだ」
「ではパスタも」
「得意だよ、それも」
 本当のことだ、親父はそちらも得意なのだ。
「ピザも作るし」
「そして大家さんもですね」
「うん、よく食べさせてもらったよ」
 そのパスタやピザをだ。
「親父が自分の手で作ってくれてね」
「そうなのですか」
「子供の頃からね」
 それこそ物心ついた頃からだ、親父は僕によく料理を作ってくれた。まずかったものは一度もなかった。しかも心が籠っていた。
「そうだったよ」
「結構いい親父さんじゃね?」
 ここまで聞いてだ、美沙さんはこう言って来た。
「確かに女癖は最低だけれどさ」
「いい面があることは事実だよ」
「悪い面があればいい面もあるか」
「そうなるね」
「だよな、誰だってそうだよな」
 親父だけでなくだ、この世の皆がだった。
「そのことは」
「そうよね」
 こう話すのだった、そして。
 そうした話をしてから昼食を全部食べて後はそれぞれの場所に戻った、午後の授業を受けてそれからだった。
 バスケ部の部活にも出て八条荘に戻った、するとだった。
 正門のところにだった、ブロンドの腰のところまである見事な髪に青い瞳、そして白く高い鼻を持つ背の高い女の子がいた、白いシャツから胸がかなり出ていて青のジーンズの脚はかなり長い。年齢は僕と同じ位だった、目は大きくはっきりとしていて細い髪の毛と同じ色の眉が綺麗なカーブを描いている。その娘がいてだった。
 僕に対してだ、笑顔でこう言って来た。
「ここのアパートの人?」
「はい、そうですけれど」
 僕はその白人の女の子に答えた。
「貴女は」
「ジューン=シュガー=サトーヨ」
 右目をウィンクさせて僕に名乗ってきた。
「今度八条学園高等部二年に入ってネ」
「それじゃあ」
「そう、ここが八条荘よネ」
「そうです、あと高等部二年ってことは」
「十七歳ヨ」
 また右目をウィンクさせて僕に答えてくれた。 
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