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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第七話 アメリカからの入居者その五

「それはなかったよ」
「それはまだましか」
「女癖は最低だけれどね」
 浪費家でもあった、それでもだった。
「借金もしないし」
「そこはまだいいんじゃね?」
「そうだよね、僕もそう思う」
「人間の屑の最後まではいってないんだな」
「糞親父だけれどね、正直」
 糞親父は黒親父でもだ、何しろ詩織さんの父親かも知れないだけはある。他の女の人を妊娠させるなんて普通に有り得る親父だからだ。
 それでだ、確かに酒乱だの暴力だの借金だのギャンブルなどとは無縁で。
「屑かっていうと違うよ」
「糞親父で止まりか」
「あれでいいところもあるからね」 
 このことも認めるしかなかった、本当のことだから。
「お袋もとてもいい人だったけれど」
「お家を出られたんですね」
「そうなんだ」
 僕はそのお袋のことを思い出しながら小夜子さんに答えた。
「今はどうしているかはね」
「わからないですか」
「元気ならいいけれど」
 心から思っている、何しろ僕を産んで育ててくれた人だから。
「優しくて料理上手でね、家事も凄く早くて」
「そうした方だったのですね」
「いつも笑顔で。まあ怒ると怖かったけれど」
 そしてその怒る矛先は決まっていた。
「親父に対してね」
「それはお父上に問題があるのでは」
「あるんだよね、だからなんだよ」
 お袋も怒ったのだ、親父の浮気があまりにも酷くて。
「その女癖ね」
「それで離婚されたんですね」
「家を出て行ったよ、ただ親権は親父が持って」
「お母上にはついて行かなかったのですか」
「そうしようかなって思ったんだ、最初はね」
 あの親父と一緒にいるといつもとんでもない女性関係を見せられるからだ、伊藤博文もびっくりという位のそれを。
「けれど僕は八条家の人間で」
「八条家を離れることはですね」
「どうかって。親戚の人達が言ってね」
 その八条家の人達がだ。
「それで残ることになったんだ」
「そうだったのですか」
「それに。親父は女癖が悪いけれど」
 このことは何度言っても足りない、けれどだった。
「それだけだから」
「一緒に住んでもですね」
「うん、問題ないからね」
 僕もそう思い周りつまり八条家の人達もそう判断したからだ。
「親父のところに残ることにしたんだ」
「左様ですか」
「それでお袋は慰謝料とかを貰って」
 そうしてだった。
「一人暮らしに入ってね」
「それから会われたことは」
「それがないんだよ」
 この現実もだ、僕は話した。
「元気だったらいいけれど」
「本当にそうですね」
「まあ死んだらね」
 縁起でもないけれどこの考えなのは確かだった。
「連絡が来るから」
「そうですか」
「うん、また会いたいことは確かだけれどね」
「そうですね、別々になりましても」
「親父は親父でね」
「お母上はお母上ですね」
「うん、どっちになるかっていうとね」
 こう答えた僕だった。 
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