八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第七話 アメリカからの入居者その四
「正直いい気持ちしないよ」
「うん、そうだよね」
僕も美沙さんのその言葉に頷いて同意した。
「そう思われるうとね」
「警戒されてね」
「怯えられてね」
「それで楽しく思う奴はおかしいと思うよ、あたし」
こうも言う美沙さんだった。
「好かれるのならともかくさ」
「そうだね、僕も好かれるのならいいけれど」
「怖がられるって嫌われるのと同じになったりするし」
この二つの感情は容易に一つになる、僕も子供の頃怖いものを嫌いになった。それで美沙さんの今の言葉がわかった。
「だからね」
「怖がられるのは真っ平だよ」
「その通りだよ」
「だからさ、小夜子ちゃんに怖がられてないのなら」
「それで嬉しいね」
「全くだよ」
こうにこりと笑って言うのだった。
「あたしもそう思うよ」
「そうなのですね」
「そうさ、じゃああたし達って友達だよな」
美沙さんはにこりと笑って小夜子さん本人に言った。
「そうだよな」
「私達は友達ですか」
「そう思っていいかい?」
小夜子さんにこうも言うのだった。
「友達だって」
「私の方こそ」
小夜子さんもこう美沙さんに返した。
「そう思わせて頂いて宜しいでしょうか」
「ああ、頼むぜ」
笑顔での返事だった。
「これからさ」
「はい、それでは」
「そういうことでな」
「私もですね」
詩織さんも輪に入った。
「友達ですね」
「そうだよ、仲良くやろうな」
「そうですね、これからも」
「やっぱり一緒に住むのならさ仲良くしないと」
「ギスギスしても何にもならないからね」
ここで僕が言った。
「それって最悪だから」
「大家さんの家ってそうだったのかよ」
「うん、親父がね」
僕は苦笑いになって美沙さんに答えた。
「何分女好きだったから」
「お袋さんと喧嘩ばっかりしてたんだな」
「もう浮気なんてしょっちゅうだったからね」
結婚する前もしてからもこれは変わらない、どうせイタリアでも相変わらず女の子達と仲良くしているんだろう。
「もう凄かったよ」
「それはまた大変だな」
「とにかく女癖の悪い親父だからね」
現在進行形でだ。
「凄かったよ」
「だから大家さんはそう言うんだな」
「家庭円満第一だよ」
心に刻み込んでいる、このことは。
「子供の頃和気藹々とした家庭に憧れもあったよ」
「そうした家庭じゃないからか」
「まあ親父もね、女癖は悪くても」
それでもだった。
「お酒は飲んでも飲まれない、ギャンブルはしない、暴力は振るわないからね」
「女癖だけか、問題は」
「その女癖は桁違いだけれどね」
「暴力は振るわないんだな」
「僕にも振るわなかったしお袋にもね」
離婚して出て行った、今はどうしているのだろうかと時々思う。
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