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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第七話 アメリカからの入居者その三

「だからピアノ部はそこでもまとまってるんだ」
「まとめ役もいてくれてですね」
「そうなんだ」
 その事情を話した。
「あの人もね」
「そうですか、それでしたら」
「何よりですね」
 詩織さんに続いて小夜子さんも微笑んで言った、そして。 
 美沙さんは僕にだ、こんなことを言って来た。
「何かあたしここに来て三日位しか経ってないんだよな」
「うん、そうだよね」
「一番古い詩織ちゃんでもだろ」
「はい、そうですね」
「まだ一週間も経ってないよな」
「そうなのですが」
「何か色々あってさ」
 それで、というのだ。
「一ヶ月以上いてる気がするよ」
「うん、僕もそう思うよ」
 僕は美沙さんのその言葉に頷いた、今思い返すとだ。
 親父が急に転勤になって八条荘の管理人になって畑中さんも来てくれて。それだけでも相当なことだったけれど。
 それに加えてだ、入居者の人が毎日来た、しかもどの人もかなり個性的な人ばかりなのでこう思うのだった。
「もう一年以上経ってるみたいな」
「大家さんもそう思うよな」
「うん、色々あったからね」
「何か八条荘ってどんどん賑やかになってくな」
「多分ね」
 ここで僕はこうも言った。
「入居する人はまだ来るから」
「今以上にか」
「賑やかになるよ」
 こう美沙さんに返した。
「最終的にはどうなるかな」
「楽しみだよな」
「楽しみ?」
「ああ、あたし賑やかなのが好きなんだよ」
 美沙さんは実際に楽しげな笑みを浮かべて僕に話した。
「だからさ」
「賑やかになっていいんだね」
「どんどん色々な人が来てな」
 そして、というのだ。
「皆で楽しくやりたいな」
「そうですね、私もそう思います」
「私もです」
 詩織さんと小夜子さんも微笑んで美沙さんの意見に同意した。
「より楽しく」
「そうなって欲しいです」
「寂しいよりも賑やかに」
「両親にもそう言われていました」
 ここで美沙さんはこんなことも言った。
「私はこれまでは人見知りをして賑やかな雰囲気が怖い時もありました」
「怖いって?」
「沢山の見知らぬ方が大勢おられると」
 小夜子さんとしては、というのだ。
「怖かったのです」
「自分が何をされるかと思うと」
「ですからパーティーは本当に苦手でした」
「そうだったんだ」
「一人だけなら怖くなかったのですが」
 それがだ、大勢集まっているとだったというのだ。
「そうした場所は」
「じゃあ今はどうかな」
「はい、怖くなくなってきています」
 次第に、というのだ。
「少なくとも詩織さん達は」
「私達はですか」
「怖さを感じません」
「というか怖がられるってね」
 そう思われるとどうか、美沙さんが言う。 
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