八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第七話 アメリカからの入居者その二
「別にね」
「いいんだな」
「悪人じゃないとね」
この条件が付くけれどそれでもだった。
「いいよ」
「そうだな、じゃあな」
美沙さんはここまで話してだ、あらためてだった。
お弁当を食べながらだ、僕にこのことを尋ねて来た。
「先輩と千歳ちゃんは?」
「あの人達がここにいない理由だよね」
「学年が違うからかい?」
「いや、早百合先輩と千歳さんは二人で一緒だよ」
「二人でか」
「うん、二人で一緒に食べてるよ」
こう美沙さんに答えた。
「ここに来る時に千歳さんから携帯にメールが入ってね」
「それでそう言われたんだな」
「うん、早百合先輩と一緒にお昼食べるってね」
「何か先輩と千歳ちゃん急に仲良くなったよな」
「そういえばそうですね」
小夜子さんは美沙さんのその言葉に頷いた。
「昨日の今日で」
「そうですよね」
詩織さんも言うのだった。
「相性がいいのでしょうか」
「そうじゃね?先輩優しいしさ」
とにかく優しい人であることは僕もわかった。
「千歳ちゃんもいい娘だし」
「どちらも譲るタイプですし」
「譲り合いするからさ」
「上手にいくのですね」
「そういう相性のよさだろうな」
美沙さんは相変わらずお弁当を勢いよく食べながら詩織さんに話した、そうしてその話をしながらだった。
お弁当を食べ終えた、そうしてデザートの林檎を出しながらそのうえでだ、二人の話をさらに続けていた。
「先輩と千歳ちゃんはさ」
「相手を気遣える、いいことですね」
小夜子さんも言って来た、相変わらずお箸の使い方が綺麗だ。
「あのお二人に問題はありませんね」
「ただ、引っ張ることはさ」
それは、と言う美沙さんだった。
「どっちも出来ないよな」
「それはそうですね」
「先輩は言葉で引っ張る人じゃないよ」
早百合先輩のそうした性格はすぐにわかることだった。
「自分がしてみせてさ」
「ついて来てもらう、ですね」
「先輩はそうした人だろ」
「そうですね、あの人は」
「あれこれ言われるよりさ」
「ご自身がやってみせて」
それからというのだ。
「人についてきてもらう」
「そういう人だからな」
「人に強く言うことが出来ない人ですね」
「性格的には」
「あまり部活の部長さんには向いていない様にも」
思えるとだ、こうも言う詩織さんだった。
「大丈夫なのでしょうか」
「あそこは副部長さんの補佐があるみたいだよ」
僕は先輩を心配する詩織さんにあの部活の事情を話した。
「早百合先輩は確かにピアノの腕は凄いけれどね」
「人を叱ったりすることは出来ないですよね」
「人に来てもらうタイプだしね」
「だから叱ったりすることはですか」
「うん、副部長さんがしてくれてるんだ」
部長さんの親友でもある、その副部長さんが自分から率先して部長さんの補佐をしてそうしているのだ。
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