| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第六話 ピアニストの入居その十四

「ですが。嫌なことや怖いことからは逃げてしまいます」
「そのことをどうにかしたいと思われているのですね」
「村山さんの様になりたいのです」
 その弱い自分を自覚しているからこそ、というのだ。何事にも常に逃げずに向かう人になりたいというのだ。
「だからこそあの人を尊敬します」
「左様ですか」
「はい、そして小林小夜子さんですね」
「小夜子とお呼び下さい」
 名前で、というのだ。
「宜しくお願いします」
「わかりました、それでは小夜子さんと呼ばせて頂きます」
「その様にお願いします、それで小夜子さんも」
「はい、そうした性格なので」
 気が弱いというのだ。
「強くなりたいと思っています」
「左様ですか、では」
「はい、お互いにですね」
「頑張って行きましょう」
「是非」
 二人で話していた、そしてだった。
 その話を聞いてだ、僕は詩織さんに言った。
「小夜子さんと先輩はね」
「似ていますね」
「うん、そう思うよ」
「そうですわ、お二人共芸術家ですし」
「それでいてね」
「気が弱いことを自覚されていまして」
 そして、なのだった。
「克服されようとするところが」
「似ているよね」
「そうですね」
「いいんじゃないの、それで」
 美沙さんが笑ってここでこう言った。
「弱いのなら強くなればいいっていうのはね」
「そのことは、ですよね」
「そう、いいことよ」
 美沙さんは千歳さんにも言った。
「それ自体がね」
「弱点は克服されるべきですね」
「自分が克服したいと思えばね」
 そう思ったらというのだ。
「だからあたしは二人が正しいと思うわ」
「そうなるんですね」
「ええ、それじゃあね」
 ここまで話してだ、美沙さんはあらためて話した。
「朝御飯食べてね」
「うん、そうしてだよね」
「学校行こうね」
 日常のことだった、話すことだ。
「そうしようね」
「そうですね、そういえば皆さん」
 畑中さんもいてくれていた、その畑中さんが話してくれた。
「まだ着替えておられません」
「だからですね」
「制服に着替えて来て下さい」
 僕達皆に言った言葉だった。
「そしてです」
「朝御飯を食べて」
「それから登校されて下さい」
「わかりました、それじゃあ」
 僕も畑中さんの言葉に頷いた、そうしてだった。
 一旦自分の部屋に戻った、他の皆も。そうして制服に着替えてだった。
 朝御飯を食べた、今朝のメニューは中華のお粥に搾菜だった。そのお粥を食べながら僕は小野さんに感謝して言った。
「小野さんは本当に凄い人ですね」
「そうですね、このお粥は」
 早百合先輩もそのお粥を食べながら話した。
「ご馳走です」
「お粥がご馳走ですか」
「はい、そうです」
 そうだとだ、先輩は千歳さんにも言うのだった。
「お粥は手間がかかるお料理ですね」
「そういえば」
「手間をかけて作るもの、それだけでも」
「ご馳走ですか」
「手間をかけて美味しく作ったものなら」
 それこそ何でもだというのだ。
「ご馳走です」
「そうなるんですね」
「私はそう考えていますが」
「まさにその通りです」
 畑中さんがここで早百合先輩に答えた。
「早百合様はわかっておられますね」
「ご馳走について」
「そうです」
こう先輩に言うのだった。
「ご馳走とはお金をかけるのではなく」
「手間と心ですね」
「その二つをかけるものですので」
 それで、というのだ。
「早百合様はよくわかっておられますね
「そうなのですね」
「はい、ご立派です」
「そこまで仰られると」
 早百合先輩はお顔を赤くされて畑中さんに答えた。
「私は」
「申し訳ありません、恥ずかしいと」
「はい、ですから」
「わかりました、それでは」
 畑中さんはここで話を止めた、そしてだった。
 僕達は朝食を食べてからだった。歯を磨いて顔も洗ってそのうえで登校した。五人目の入居者の人は優しいお嬢様だった。


第六話   完


                        2014・7・28 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧