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胸よ大きく

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第二章


第二章

「あと豆乳ね」
「それもいいのね」
「わかったかしら、これで」
「ええ、牛乳とキャベツと豆乳ね」
「あとはそうした運動」
 佐代は運動も付け加えてきた。
「それをやっていれば大きくなると思うわ」
「わかったわ、やってみるわ」
 素子は佐代の言葉に大きく頷いた。だが佐代はここでまた言うのだった。
「あとね」
「まだあるの?」
「あんた、高志君と何処までいったのよ」
「何処までって」
 この問いの意味ははっきりとわかっている。わかっているからこそ素子も顔を顰めさせるのだった。姿勢も少し引いたものになっていた。
「いきなり何よ、そんなこと聞いて」
「関係あるのよ。何処までいったのよ」
「関係あるのね、それ」
「そうよ。だから言って」
 ここまで言われると言うしかなかった。素子も恥ずかしいがそれでも胸を大きくする為には。清水寺の舞台か極楽寺屋根上から飛び降りるつもりで答えたのだった。
「してるわよ」
「そこまでいっていたのね」
「ええ、そうよ」
 顔を真っ赤にさせて答える。白い顔がもう桜色になっていた。
「そうよ。はい、言ったわよ」
 言い終えてぶしつけになっていた。
「ちゃんとね。これでいいのよね」
「いいわ。成程ね」
 佐代はニヤニヤしていた。素子の秘密がわかって嬉しいようにも見える。素子はそれがまたとても嫌だったが言ってしまったからには仕方がなかった。
「高志君も隅に置けないっていうか。大人しい顔をして」
「あんたもでしょっ」
 素子も佐代に彼氏がいることは知っているので思わず言い返した。
「それも相手中学生じゃない。子供に何してるのよ」
「男はやっぱり年下よねえ」
 それが佐代の趣味であった。うっとりとさえしている佐代であった。
「色々と手取り足取り教えてあげるのがいいのよ」
「変態!?あんた」
 素子はそれを聞いて思わず言い返した。
「それって」
「そうかしら。自覚はないわよ」
 佐代は素子の言葉にも平然としたものであった。しれっとして言い返す。
「変態だなんて」
「中学生にいけないこと色々と教え込んでいて?」
「言っておくけれど押し倒されたのは私よ」
 何気にとんでもないことを口にする。
「わかる?向こうから仕掛けてきたのよ」
「そう仕向けることはできるわよね」
 それがわからない素子でもない。こんなことは恋愛では基礎の基礎である。
「そうでしょ」
「あら、じゃあ私が仕掛けたっていうのかしら」
「その通りよ」
 素子はそれもまたはっきりと述べてきた。
「それ以外に考えられないわよ、あんただから」
「言っておくけれどね」
 佐代もいい加減むっとしたのか言い返してきた。真剣な顔になっている。
「私だってはじめてだったのよ」
「えっ!?」
「あんただって高志君がはじめてだったわよね」
「ちょ、ちょっと」
 話がかなり危なくなってきたので慌ててクラスを見回す。幸い話は誰も聞いてはいないようであった。素子はそれにまず安心してから佐代に顔を戻して言った。
「声が大きいわよ」
「おっと、失礼」
「失礼よ。それはね」
「どうなの?」
 小声になっても話を続ける。ひそひそと顔を寄り合わせての話になっている。
「その通りよ」
「何だ、じゃあ同じじゃない」
「同じだけれど。じゃああんたやっぱり」
「勇気がいったわ」
 この言葉が全てを言い表していた。
「彼も中々乗らなかったし」
「やっぱりそうなの。こっちもなのよ」
 何と素子も高志もそうであったのだった。
「高志君も奥手だから」
「やっぱりね。そんな感じはするわ」
 それには佐代も頷くことができた。
「だからよ。そこまでいくのに苦労したのよ」
「それで今度はもっと苦労するつもりなの」
「ええ、そういうこと」
 話が胸に戻る。そうしてまたそれについて話をするのだった。
「大きくしたいからね」
「高志君って胸が大きいのが好きなんだ」
「だから。それは男なら誰でもそうなのよ」
 素子はそれを信じて疑わないようであった。それが顔にもはっきりと出ていた。しかしそれだけではなく彼女は何かに焦っていた。焦っているのもまた顔に出ていた。
「だからよ。頑張ってみるわ」
「じゃあ頑張ってね」
 佐代は何か引っ掛かるものがあったがそれを応援することにした。
「気合入れてね」
「目指すは川村ひかるさんよ」
 グラビアアイドルを目標にしてきた。
「やってやるわ」
「頑張ってね」
 こうして素子の豊胸計画が実行に移された。それはその日のうちにはじまり彼女は家に帰るとすぐに運動をはじめ牛乳を激しく飲む。それだけでなくもう豆乳やキャベツを買い込んでブラまで替えてしまっていた。動きは実に迅速であった。
 
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