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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第六話 ピアニストの入居その八

「これからお願いします」
「不束者ですが」
 何か気になる表現だったがとりあえず今は気にしないことにした。
「これからも」
「それでは」
「では早百合先輩」
 千歳さんも早百合先輩をこう呼んでだ、あらためて先輩に言った。
「部活でもお願いします」
「はい、こちらもそ」
 早百合先輩は千歳さんにも丁寧だった、小夜子さんもそうだけれど気品があってまさにお嬢様だ、いい人みたいで何よりだ。
 そして実際にだった、同じ二年生のピアノ部の娘に後で早百合先輩のことを聞くとだ、その娘にこう言われた。
「部長さん?とてもいい人よ」
「そうなんだ、やっぱり」
「ええ、親切でよく気が利いてくれて丁寧でね」
「僕が思った通りの人なんだね」
「そうよ、私もよくしてもらってるわ」
 早百合先輩に、というのだ。
「尊敬出来る先輩よ」
「そうなんだね」
「ただね」
「ただ?」
「部長さんも独特な人だから」
「手袋とか?」
「手袋以外にもよこう言ったら何だけれど」
 この前置きからだ、僕にこんなことも話した。
「多少以上に風変わりなところもあるのよ」
「そうなんだ」
「部活の間、演奏している時以外はね」
「その時以外は?」
「ずっとお茶を飲んでるのよ」
「お茶好きなんだ」
「紅茶をね。ずっと飲んでるのよ」
 そう聞いても普通だと思った、紅茶なら飲むだろうと。
「物凄く濃い、お砂糖も何も入れないもうカップの底が見えなくなる位の紅茶をね」
「ミルクも入れないんだ」
「勿論レモンもね」
 つまり何も入れないというのだ、紅茶の中に。
「その濃いお茶を始終飲んでるのよ」
「演奏の時以外は」
「手袋を着けたままでね」
「それは確かに変わってるかな」
「そうでしょ、他にも結構独特なところがあるから」
「そうなんだ」
「噂だとあんたのアパート今個性派な娘が揃ってきてるみたいね」
 このこともだ、ピアノ部の娘は僕に言って来た。
「そうよね」
「それはね」
「まあその中に部長さんがおられてもね」
「違和感ないんだ」
「まずないわね」
 そうした域の人だというのだ。
「あの人なら」
「そうなんだ」
「けれど悪い人では絶対にないからね」
 ピアノ部の娘はこのことは保障した。
「安心してね」
「悪い人じゃないことはわかったよ」
「むしろいい人だから」
 悪い人とは真逆だというのだ、早百合先輩は。
「困ることはないわ」
「驚くことはあっても」
「ええ、あとね」
「あと?」
「部長さんはとにかく手袋脱がないからね」
 このことは僕に念を押した。
「演奏の時は脱がれるけれど」
「あと寝る時も」
「そう、そうした時は脱がれるけれど」
「その時以外は」
「そう、そのことは無理強いしたら駄目よ」
「わかったよ、そのこともね」
「それじゃあね」
 こうした話をしてだった、僕はその娘から早百合先輩のお話も聞いた、とりあえず悪い人でないことは間違いないと思った。 
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