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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第五話 お兄ちゃんじゃないからその九

「千歳ちゃんシェークスピアは好きかな」
「シェークスピアですか」
「うん、どうかな」
「一度演じたことがあります、中学の時に」
 僕の質問にだ、千歳さんはこう答えてくれた。
「ロミオとジュリエットを」
「ああ、あれね」
 代表作だ、そのシェークスピアの。
「有名な作品だね」
「それで。侍女役をしました」
「ジュリエットのだね」
「二年の時に」
「ジュリエットはしなかったんだ」
「その時の演劇部は主役は三年生って決まってたので」
 それでだ、ジュリエットはしなかったというのだ。
「私も主役は三年からでした」
「何をやったのかな、それで」
「コンスタンスを」
「三銃士の」
「はい、ヒロインをしました」
「中々いい役だよね、コンスタンスって」
「大好きです」 
 千歳さんは僕に笑顔で答えてくれた。
「あの役も」
「いいよね」
「あと少年探偵もして」
「江戸川乱歩の?」
「はい、私女の子ですけれど二十面相をしました」
「二十面相したんだ」
「あの役も大好きです」
 微笑んで話してくれた。
「悪役として格好いいですよね」
「あの役はね、ルパンもそうだけれど」
「色々と言われていますが」
「色々って?」
「何でも二十面相は死んだとか」
「あれっ、そうだったかな」
 僕も少年探偵のシリーズは好きでかなり読んでいる、特に二十面相が出て来る作品は全部読んだ。けれど僕の知る限り二十面相は死んでいない。
 けれど千歳さんはこう言う、それで心の中で首を傾げながらそのうえで千歳さんに尋ねた。
「死んでたの?」
「そうも言われています」
「あれっ、死んだと思っても」
 二十面相の場合はだ、これは捕まってもだ。
「生きていたりしてるよね」
「そうですよね、ですが」
「その時になんだ」
「鉄塔王国の秘密ですが」
「ああ、あの作品だね」
 僕もその作品は知っている、全部読んでいるだけに。
「あの作品でなんだ」
「はい、最後二十面相は飛び降りてますけれど」
「あばよ、とか言った様に聞こえたってあったね」
「あの時になんです」
「死んだって言われてるんだ」
「そうした説もあります」
「そうだったんだ」
「あくまで一説にはですが」
 そう言われているというのだ。
「そうしたことを言われている方もいます」
「ううん、それは初耳だったよ」
「それで後の二十面相はです」
「二代目なんだね」
「そう言われています」
「あの作品で確かに飛び降りてるからね」
 よく覚えている、あの作品の結末は。
「そこでなんだ」
「違うかも知れないですが」
「生きてるかも知れないんだね」
「その辺りは違うっていう人もいます」
「よくわからないんだ」
「それで私はです」
 千歳さんは話を演劇に戻して話してくれた。
「その二十面相になったんです」
「嬉しかったんだね」
「はい、演目は怪人二十面相です」
 記念すべき一作目である。
「マント羽織って。それでタキシードも着て」
「覆面もしてだよね」
「二十面相になりました」
「成程、面白そうだね」
「というかね」
 美沙さんがこんなことを言って来た。 
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