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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第五話 お兄ちゃんじゃないからその四

「実はです」
「実は?」
「このお屋敷にはピアノもあるのです」
「あっ、そうだったんですか」
「はい、そうです」
 こう話すのだった。
「実は」
「ピアノですか」
 ピアノと聞いてもだった、僕は。
 首を傾げさせてだ、こう畑中さんに返した。
「僕はピアノは」
「弾かれませんか」
「はい、実は」
「そうですか、ですが」
「ピアノはあるんですね」
「それで宜しければ」
 この前置きからだ、畑中さんは僕に言うのだった。
「一階の大広間に出していいでしょうか」
「ええ、別に」
 いいとだ、僕は畑中さんに答えた。
「僕はいいですけれど」
「わかりました、それでは」
「はい、けれどどうしてなんですか?」
 僕はまだわかっていないという顔でだ、畑中さんに問い返した。
「何でまた急にピアノを出すなんて」
「はい、それはです」
 どうしてかとだ、畑中さんは僕に答えてくれた。
「後々おわかりになられます」
「つまりあれですね」
「はい、あれです」
 何か僕もわかってきた、こうした時にどうなっていくのか。もっと言えば畑中さんの言うこととやることもだ。以心伝心になってきていた。
 その以心伝心でだ、畑中さんも僕に答えてくれた。
「おわかりになって頂き何よりです」
「そういうことなんですね」
「左様です、そういうことで」
「ピアノですか」
「ピアノはいいものです」
「そうですね、ですがピアノっていうと」
 そのピアノについてだ、僕はあらためて言った。
「何かお嬢様っぽいですね」
「その通りです、ただ」
「ただ?」
「一つ気になることは」
 何かというと。僕は畑中さんにこうも言った。
「またいつもみたいに」
「なります」
「そうなんですね、普通にはいかないんですね」
「どうもそれが」
「それが?」
「義和様の星の回りの様です」
「何かそんな気がしてきました」
 そもそも血縁的にも戸籍上でもそうである親父自体が普通じゃない、親父のことも考えるとだった。
「僕の日常は」
「他の方とはいささか違います」
「そうなりますね、やっぱり」
「はい、ですから」
 それでだというのだ。
「そうしたことだと認められたうえで」
「日常を生きるべきですね」
「はい、ここで諦めれられては」
「それで終わりですね」
「その通りです」
 とあるバスケ漫画の言葉だけれどその通りだった、人生は諦めてそれでどうにかなるものかというとそうではない。
 諦めるよりもだ、それよりもだった。
「前を向かれるしかないのです」
「そうして歩くことがですね」
「大事なのです」
 そうなることだった。 
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