八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五話 お兄ちゃんじゃないからその三
「けれどね」
「それでもっていうのね」
「そう、僕はもてないから」
あの親父は悪い意味でもてると思う、けれど僕はその悪い意味においてもいい意味においてもだ。それもとても。
「全然ね」
「ううん、とてもね」
「そうは見えないっていうんだね」
「大家さん優しいし」
まずはこのことからだった。
「色々と気が利くし」
「そうかな」
「しかも成績もそこそこでしょ」
「八条大学に行ける位には勉強してるよ」
とりあえずあの大学の経済学部に合格出来る位の学力を備えられるだけの勉強はしている、何故経済学部かというと基準の一つとしてだ。経済学部はあの大学の中でわりかし偏差値が高いので参考にしやすいからだ。
「一応は」
「しかもバスケ部の練習見たけれど」
「スポーツもっていうんだ」
「そう、いけてるから」
「もてるっていうんだ」
「顔もいいしね」
最後にこれだった。
「それでもてない筈ないでしょ」
「いや、本当に言うけれど」
「それが信じられないけれど」
「そうかな」
「あたしが見たところ大家さんはもてるわよ」
断言だった。
「若しくはもててるけれどそれに気付いていないとか」
「そこまで鈍感じゃないつもりだけれど」
「まあね。人間っていうのはね」
「人間って?」
「急にもてたりすることもあるから」
そんなこともあるらしい、うちの親父みたいに破天荒なまでに女好きでしかももてている人間は稀なのはわかっている。
「これからそうなるかもね」
「まあそんなことになったらね」
ここからはだ、僕は冗談半分で言った。
「有り難いね」
「あっ、言ったわね」
「僕だって女の子は嫌いじゃないから」
「普通に興味があるのね」
「まあ、こう言ったら何だけれど」
女好きとかそう思われることは意識して快くはなかった、けれどだった。
それでもだ、僕は美沙さんに返した。
「女の子は嫌いじゃないよ」
「そっちの趣味はないのね」
「そう、ないから」
それで、というのだ。
「そっちの方はね」
「まあそうそう漫画みたいな話はないわね」
「僕はノーマルだよ」
このことはあえて言った。
「そっちだよ」
「そうなのね」
「そう、けれどもてるのならね」
このことも冗談半分でだ、僕は言った。
「望むところだね」
「言ったわね」
「うん、楽しみにしてるよ」
笑ってこう美沙さんに言ってだった、僕は一旦美沙さんと別れて着替え向かった。そうして。
そのうえでだった、僕は美沙さんだけじゃなく詩織さん、小夜子さんと一緒にだった。四人で来てくれた車で帰った。
晩御飯は普通だった、味はいい意味で普通でなかったけれど。ついでに言えばメニューも。
その晩御飯を食べてお風呂に入って歯も磨いてからだ、僕はこの日も書斎で畑中さんと話をした。畑中さんは僕にこう言って来た。
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